小さな椅子のある風景

外を眺めるための椅子。窓辺に椅子を置くとそれだけで絵になるもの。座面を古い麻布でリメイクした「プティキュ」の椅子は本当に愛らしい。

 小さな、古い木の椅子が大好きです。心惹かれる理由は、私の椅子の原点で、父がつくってくれた木の椅子にあります。

 あれは小学校の低学年の頃、居間のちゃぶ台の隣に、あるときお茶を飲む洋テーブルが登場。昭和の高度成長期で、地方の田舎家のインテリアにも洋の生活様式が登場したのですね。その洋テーブルに合わせて、子ども椅子を父が手づくりしてくれたのです。背もたれには、私の好きなチューリップのモチーフが手彫りで細工されていました。腰掛けると幼い私の足がぶらんぶらんしていた記憶も。大人に成長した娘が使うことまで父が考えてのサイズだったようです。自分の椅子をもらえて悦び満面だった私に父が、「ゆきちゃん、この椅子お嫁にもっていってや」と嬉しそうに言ってたことも覚えています。

 その父の椅子は、いまお店の片隅に置いてあります。椅子の足がガタガタするので使ってないのですが 、仕事中に視線がいくと、なんだか父の愛情にくるまれるような気持ちになれて励まされます。一生の宝物です。

 椅子は、人の愛情を受けとめ、人のぬくもりを宿す道具。もしあなたにお子さんがいたら、「あなたの専用よ」とその子が大人になっても使える椅子を持たせてあげるのも素敵ですよ。

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2014.05.12(月)
文・構成=おおいしれいこ
撮影=石村由起子