まずはその目で確かめて
この明治12年の展観のあと、明治20年(1887)には「花」と「雪」はパリの美術商、ジーグフリード・ビングの手元に置かれ、「月」も後にビングへ譲られた。「花」と「月」がその後アメリカの美術館へ収まったことは周知の通りだが、「雪」はいったん日本人の浮世絵収集家の手に渡り、前出の通り昭和23年(1948)に銀座松坂屋で公開された。しかし以来、杳として行方がわからなくなり、2012年に日本の古美術商が発見するまで、「幻の歌麿作品」となっていた。
「雪」の制作時期と目されるのは、享和2年~文化3年(1802~1806)頃。文化3年に没した歌麿の人生に当てはめてみれば「晩年の作品」だが、年齢的には50代前半で、脂が乗りきった時期とも言える。果たして歌麿の筆になるものなのか、また誰が、何の目的で制作を依頼したのか、いくつもの謎の残る作品を、まずはその目で確かめてほしい。
特別展示以外の岡田美術館所蔵コレクション
特別展示<再発見 歌麿「深川の雪」>
URL http://www.okada-museum.com/
会場 岡田美術館
会 期 2014年4月4日(金)~6月30日(月)
休館日 会期中休館日なし
入場料 一般2,800円 ほか
問い合わせ先 0460-87-3931(代表)
備考 『深川の雪』のほかにも喜多川歌麿、葛飾北斎、上村松園などの美人図、芸妓図も展示
Column
橋本麻里の「この美術展を見逃すな!」
古今東西の仏像、茶道具から、油絵、写真、マンガまで。ライターの橋本麻里さんが女子的目線で選んだ必見の美術展を愛情いっぱいで紹介します。 「なるほど、そういうことだったのか!」「面白い!」と行きたくなること請け合いです。
2014.04.26(土)
文=橋本麻里