NHK連続テレビ小説『虎に翼』で、主人公・寅子の大学の同期生、轟太一を演じ、話題となった戸塚純貴さん。彼にとっての次なる初挑戦は、ミュージカルへの出演だ。

 作品は日本初演のコメディ・ミュージカル『グラウンドホッグ・デー』で、演出は数々のコメディ作品を手がけてきた福田雄一さんが務める。“初めて”のミュージカルに戸塚さんはどんな思いを抱いているのだろうか。


福田さんはこれまでも越えるべき壁を与えてくれた

――初めてミュージカル作品にキャスティングされた心境を教えてください。

 “歌も踊りもできます”なんて、僕は世間にも、福田さんにも言ったことがなかったので、どうしてだろう? って、思いました。福田さんはこれまでも越えるべき壁を与えてくださってきた方なので、今回も僕に“ミュージカル”に出てほしいというお考えがあってお声がけくださったのでしょう。福田さんが演出されるなら、僕も挑戦してみようと思いました。

 “いつかミュージカルに出演したい”と目標を掲げていた訳ではなく、むしろ自分にはできないと思っていましたが(笑)、福田さんがメンバーとして入れたいと最初に決めていたと伺って、お声がけいただいたことがありがたいです。楽しさを見出せるかどうかは自分次第ですし。

 稽古が始まる1か月ほど前から歌唱指導の方にボイストレーニングをしていただきました。共演者の方たちとできるだけ同じところからスタートできるようにと思ったからです。作中では僕が1曲だけソロで歌わせていただきます。その曲を指導していただくところにもまだ到達できていないので、ソロの曲は個人的に細々と練習をしています。

――“ミュージカル”にはどんなイメージがありますか?

 ミュージカルは、僕のようなスキルを持っていない者が到底出演することのできないレベルの高いジャンルだというイメージがあります。観客としては好きで、『レ・ミゼラブル』や『ミス・サイゴン』には、ミュージカルの素晴らしさを感じます。福田さんが演出をなさったミュージカルもよく拝見させていただいていますが、福田作品は独特で、僕にも入りやすい世界だという印象がありました。

人生観を考えさせられるような哲学的な要素も

――『グラウンドホッグ・デー』にはどんな感想をお持ちですか?

 原作映画の『恋はデジャ・ブ(邦題)』はもともと好きな作品で、それがミュージカル化されていることは知りませんでしたが、たしかに舞台でやったら、すごく面白いだろうと感じました。

 恋愛要素のあるラブコメなので入りやすい題材ですし、タイムリープするストーリーで、舞台の転換や仕掛けなど、舞台だからこそできる面白さもありますね。人生観を考えさせられるような哲学的な要素も詰まっている作品だと思いました。

――戸塚さんが演じるネッド・ライアーソンをどのように捉えていますか?

 ネッドは保険会社のセールスマンで、主人公で同級生のフィルとは久しぶりに再会するのですが、相手にはほとんど覚えてもらえていない存在です。それでも保険に入ってもらおうと勧誘するんですが、役柄としてうっとうしい(笑)。

 でも蓋を開けてみると、ネッドにも家族がいて、守るべきものがあって、それを知った途端、見方も変わります。この人も頑張っているのだから、無碍にしてはいけないなと。肩書きだけで判断したり、目に見えるものだけで決めつけたりする人に対してのものの見方がネッドにはあって、僕は深い役だと思っています。

 それなのに、福田さんからは「役作りをしている暇があったら、面白いことを言ってください(笑)」と、演出家としてはあるまじきことを指示されます(笑)。それが福田組ならではの厳しさではありますけどね……。

2024.11.05(火)
文=山下シオン
写真=佐藤 亘
スタイリスト=森大海
ヘアメイク=小田桐由加里