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 現在放送中の大河ドラマ「光る君へ」で藤原頼通を演じている渡邊圭祐さんは、王子様キャラから腕の立つ剣士まで、様々な役をものにしている俳優だ。

 山田風太郎さんの小説『八犬伝 上・下』をオールスターキャストで映画化した『八犬伝』では、八犬士の一人で「孝」の珠を持つ犬塚信乃として出演する。

 八犬士の中でもひときわ存在感を放つ信乃を、渡邊さんは嬉々として好演。劇中では、惚れ惚れするような殺陣も披露した。


台本だけでなく、アクションを通して役を掴んだ

――映画『八犬伝』のもとになっている小説『南総里見八犬伝』は、以前からご存じでしたか?

 『南総里見八犬伝』というタイトルは知っていたんですけど、触れたことはありませんでした。今回のお話をいただいて、まず小説を読みました。『南総里見八犬伝』は映画化も舞台化もされているので、イメージを膨らませるため、映像作品も観賞しました。

 シンプルに熱くなってくるというか、少年漫画のような真っ直ぐさが詰まっていて、すごく素敵な物語ですよね。

――渡邊さんは八犬士のひとり・犬塚信乃を演じています。どのような人物という印象だったんでしょう?

 八犬士は全員にすごく色があるというか、個性あふれるキャラクターが揃っているんです。その中で信乃は、癖がなく、とにかく真っ直ぐで熱い男というイメージでした。

――信乃は八犬士の中でも特にスポットライトを浴びるような、真ん中に立つ存在でしたよね。オファーを受けての感想も伺いたいです。

 「信乃が自分でいいんですか?」という気持ちでした。プレッシャーはありつつも楽しんでやれたらいいなと思ったので、クランクインする前からすごくワクワクしていたんです。

 たしかに、役柄として自分がほかの七犬士を引っ張っていく一犬士ではあるんですけど、足りないものは七犬士に支えてもらっていたので、八犬士は「8人揃ってようやく」という感覚が僕の中ではすごく強かったです。

――ご自身が信乃を演じるイメージは、すぐつかめましたか?

 台本だけを読んでもすぐにはつかめませんでした。『八犬伝』は作者・滝沢馬琴(役所広司)さんの【実】と、八犬士の【虚】のパートにわかれていて、【虚】を担当する僕たちは、とにかくアクションが多かったんです。準備もまずはアクション稽古から始まって、台本読みがあって、撮影があって、という順番でした。

 そのアクションの稽古こそ、役をつかむ上で一番助けられたと実感しています。八犬士は闘い方もそれぞれで違っていて、剣の入れ方だと真向(斬り)が多いのか、袈裟(斬り)が多いのか、と個性が出るんです。そこからキャラクターが見えてくることが多かったですし、曽利(文彦)監督からは「外連味のあるお芝居をしてほしい」という言葉もいただいたので、徐々にクランクインの日までに役をつかんだという感じでした。

2024.10.24(木)
文=赤山恭子
撮影=深野未季
ヘアメイク=荒木美穂
スタイリスト=九(Yolken)