アートを徹底的に追求している監督に共感
――極寒の延吉での撮影時の思い出やエピソードは?
撮影エピソードは語り切れないぐらい、たくさんありました。私はもちろん、ハオフォン役のリウ・ハオランさんも、シャオ役のチュー・チューシアオさんも食いしん坊なんです。だから、延吉地方の名産や名物料理をたくさん食べました。延吉は、新鮮な海鮮が名物なんです。
また、雪が降っている日は、空に向かってコップに入れた熱いお湯をかけるという、遊びをよくしていました。一瞬のうちに、氷になってしまうのが綺麗で楽しいんですよ。劇中にも映っていますが、広場で踊っている人たちに混ざって踊ったりもしました。あまりに寒いと、なかなか動きたくなくなると思うのですが、オフのときも私たちはあえて積極的に外出するようにしていました。
――完成した作品を観たときの感想や好きなシーンは?
長白山などの延吉の美しい景色や美味しい海鮮グルメのこと、そして、寒くて寒くてたまりませんでしたが、楽しかった撮影が鮮明に甦りました。この映画を観たお客さんには「是非、延吉地区に観光に行ってほしい」と思います。
ネタバレになってしまうので、多くは語りませんが、いちばん好きなのはエンディングです。とても静かなシーンですが、ナナが自分なりの結論を出していて、彼女の強い意思を感じられるシーンになりました。アートを徹底的に追求しているチェン監督の独特なスタイルはとても共感できますし、個人的にも大好きです。
――ちなみに、本作を観た是枝裕和監督が「本当に大好きな作品」というコメントを残しています。
北京でのプレミア上映のときに、是枝監督からのビデオメッセージを観たのですが、そのときの気持ちを表現するならば「表面冷静、内面狂気」。ステージ上では冷静を装っていましたが、そのような高い評価をいただき大変嬉しい気持ちでいっぱいでした。
是枝監督の作品はすべて観ていますが、本当に芳醇なワインのようなものだと思っています。繰り返し観ることで、いろんな楽しみ方をしているのですが、いちばん観返しているのは『海街diary』と『万引き家族』の2作。いつか、是枝監督の作品に出演することができれば光栄です。
2024.10.22(火)
文=くれい 響