知れば知るほど見たくなる!?
ムービー制作こぼれ話
目玉はやっぱりオリジナルムービー。1分~2分と短いのだけれどドキュメント系あり、歴史ものやドラマ風ありと見せ方もユニーク。たとえば、「工場はワンダーランド!」ではベルトコンベアーに乗ったTSUBAKIシャンプーの目線で工場内をツアーできるし、色や匂いを調査する官能パネラーを取り上げた「驚くべき、特殊能力を持つ人々」はなかなか見られないシーンがいっぱい。「上だけを向いて歩こう」はほうれい線がシワではないことがわかるちょっと笑えるムービーだ。
「制作にあまりお金をかけられないこともあって(笑)、社内や研究所で撮影して研究員や制作スタッフが出演することも。『上だけを向いて歩こう』はオールロケで大変でしたが、アクセス数8万回を超える人気1位のコンテンツに。『世界は数式でできている』は理数系の方に好評で、2013年に国際的な広告賞のひとつLIAで銅賞を受賞しました」(松本さん)
私のお気に入りは「マトリョーシカでもわかる、真皮幹細胞」。難しい幹細胞をマトリョーシカに置き換えて説明したのはナイスアイデア。可愛さもピカイチ。「細胞の分化などを表現したものなんですが、マトリョーシカは中から人形が出てくるので実際の分化とは厳密には同じではないため、お客さまに誤解を招かないかと何度も議論を重ねたテーマでした。科学的な正しさをきちんとお伝えすることと、わかりやすく表現することは背反することもあるので、常にバランスを取りながら映像化するように心がけています」(松本さん)
コスメのアプローチは複雑になる一方。より機能的に高い実感が得られるのだから使い手としては嬉しいけれど、「新しさ」をちゃんと知って選び取ることも使い手の賢さ。「Pick Up Technology」のようなサイトはますます重要な存在になるし、もっと出てきてほしいと思う。
「資生堂の強みのひとつが肌の基礎研究。長年の研究知見の積み重ねがあってこそ新しい知見を生み出せるのだと思っています。それを嚙み砕いてお客さまに自分のことのように捉えてもらえるコンテンツをたくさん作りたいですね」(松本さん)
ネタ不足の心配はまったくしていませんから。これからも「いいね!」のムービー、大いに期待である。
松本理絵さん
資生堂 技術企画部
2004年入社。09年に資生堂リサーチセンターへ異動し、研究成果の事業への活用戦略立案、情報発信の推進を主に担当。12年10月に現部門へ至り、「Pick Up Technology」の担当として企画運営、管理などに携わる。
吉田昌佐美
キャリア35年の美容ジャーナリスト。新旧の名品やブランドの歴史を知りつくし、研究員からの信頼も厚い。CREAで長年にわたりナビゲーターを務めた連載「ブランド力調査隊」が今回からパワーアップ。確かな分析力と取材力でブランドの「強み」を解説します。コスメ好きはCREA WEB連載「吉田昌佐美の“早出し”ビューティ裏ばなし」も要チェック。
Column
吉田昌佐美のブランド魂発見!
鋭い視点からの取材力と情報の蓄積に定評を持つキャリア35年の重鎮美容ジャーナリストが、コスメブランドそれぞれの「強み」を解説。さまざまな逸品ビューティアイテムに込められた「魂」に迫ります。
2014.05.04(日)
文=吉田昌佐美
撮影=塚田直寛