vol.2_SK–II

“ピテラの父”が明かす
SK-IIピテラ誕生秘話

90%以上がピテラでできているSK-IIのアイコン。すーっと吸いこまれていく独特の浸透感で美容液の手応え。毎年売り上げが伸びているのはまさに効果の証だ。SK-II フェイシャル トリートメントエッセンス 150ml 16,000円/マックス ファクター

 スキンケアに絶対的な強みをみせるSK-II。その“核”となるのが独自の成分「ピテラ」だ。今回はピテラの生みの親であり育ての親でもある吉井隆さんとともに、その奥深い効果を解き明かしていこうと思う。そもそもピテラとは、「ガラクトミセス」という天然の酵母が“発酵”という自然の営みを繰り返す過程で放出する“発酵代謝液”のこと。テレビのCFなどで、「杜氏(とうじ)の手の美さ」がインスピレーションとなったのをご存知の方も多いだろう。その始まりは今から40年近く前の1970年代。

「安全で肌に有効性のある成分を独自に開発しようということで、いろんな素材を研究していて“酵母”は候補のひとつだったんです。当時、わかっているだけで350種以上の酵母があり、日本酒やワイン、ビール、パンの酵母から馴染みのない酵母までほとんどのものを調べました。肌への効果を確認するための評価法も確立されていない時代でしたから、それを開発することから始めて。発酵の専門家の協力を得て発酵条件や培養液の配合バランスの研究を行い、研究所に発酵装置を作るなど、すべて手作りからスタート。5年以上かかってひとつの成分に辿り着きました」(吉井さん)

“酵母”と“発酵”についてもう少し説明しておくと、酵母は自然界に存在する単細胞の微生物で、栄養源から成分を吸収。エネルギーとして蓄える一方、アミノ酸やビタミン類などの有用成分を作り出して放出する。このプロセスが発酵というわけ。酵母の種類や栄養源、その濃度、発酵の温度や湿度、時間、何かが違うと作り出すものが変わるほどデリケートなのだ。

30年以上処方がまったく変わらない
超ロングセラーの奥深さ

「ピテラの完成は特別な酵母と独自の高い発酵技術があったからこそ。現在も一切変えていません」(吉井さん)

 その詳細を知っているのは社内でも限られた数名。ピテラの製造タンクは研究当初と同じ滋賀県の工場にあり、ここで日本国内と世界に向けたすべてのピテラが作られているという。24時間の徹底した管理体制が敷かれ、製造室に入れるのは厳しいトレーニングを受けた技術者(通称ピテラ守と呼ばれている)数名。そんな神秘の成分だから肌にも“うまみ”があるのかも。

「50種類以上の有用成分が複雑なバランスで含まれていて、肌が本来持つNMF(天然保湿因子)と同じ組成成分を含むことがわかっています。また、遺伝子研究に基づいた最先端皮膚科学研究による結果では、キメが整い肌をなめらかにする、ふっくらとしたハリをもたらす、ハリ不足をケアする、肌を明るくする、ツヤと輝きをもたらすことが確認されています」(吉井さん)

 SK-Ⅱが叶える「クリアな肌」はこうした多彩なピテラ力が支えている。その原点となる一品が1980年に発売されたフェイシャル トリートメント エッセンスだ。ほぼまるごとピテラ、処方がまったく変わっていない超ロングセラー。実は私がこの仕事を始めたのも同じ頃で、ニキビの悩みから解放されたのはこのおかげ。以来、34年間愛用。出会い方は違っても長~く付き合っている人が本当に多い。これもまたピテラの奥深さである。

吉井 隆
SK-II 顧問研究員
SK-IIの独自成分ピテラの開発から携わり、30年以上スキンケアの美容科学研究に従事。最先端の美容科学と化粧品技術の豊富な知識を持ち、ピテラはもとより新製品の研究開発に取り組み、SK-IIを支えてきた。

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2014.03.24(月)
文=吉田昌佐美
撮影=塚田直寛

CREA 2014年4月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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