みなさまのお悩みに、脳科学者の中野信子さんがお答えする連載「あなたのお悩み、脳が解決できるかも?」。今回は、「隣家が我が家の真似ばかりする」という難題に、中野さんが脳科学の観点から回答します。(全3回の1回目。#2#3を読む)

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Q 隣家が我が家の真似ばかりする──40歳女性・パート勤務(銀行)からの相談

――お隣の一家と我が家は夫婦、子ども2人(男1人、女1人)という同じ家族構成です。夫人は、私が自分や子どもたちの洋服を新調すると、すぐに同じようなものを買ってきます。バッグや傘、カーテンの柄も真似されます。最近私が髪にメッシュを入れると、数日後には夫人の髪にもメッシュが入っていました。

 以前、中野さんが「相手の行動を真似ると真似された側は親近感を抱くようになる」とおっしゃるのを聞いたときは、なるほどと合点がいきました。でも今、実際に他人に真似をされるという経験をした私は、それが不愉快で、ストレスでしかありません。「行動を真似される」ことと「服装や持ち物を真似される」ことは違うのでしょうか。何とか解決する方法はないでしょうか。

 真似される、ということがあからさまにわかるとちょっと気持ち悪いですよね。24時間365日、監視されているようで、さぞ嫌な思いをされていることとお察しします。

 

コミュニケーションとしては失敗

 おそらく、私がお話ししたことであなたがご覧になったのはミラーリングのことではないかと思います。たとえば相手が笑ったら自分も笑う、相手が首を傾げたら自分も傾げるというように相手の動作を真似るなど、自然な形で動作を同じくすることで、こちらに対する親近感を高め、好意を持ってもらえる可能性を上げることができます。

 ただし、真似をするに当たっては相手に気づかれないように自然にする必要があります。あなたと私は偶然同じ形を選択していたのですね、という認知を与えるためです。しかし、あからさまに真似していることがわかれば、効果が半減するどころか逆に不快な感じを与えてしまうことになります。あなたがお隣さんにお感じになった感覚はこの不快感ではなかったでしょうか。

2024.10.01(火)
文=中野信子