この記事の連載
- 永井郁子さんインタビュー #1
- 永井郁子さんインタビュー #2
1987年に出版されてから小学生を中心に読み継がれている名作「わかったさんのおかし」シリーズ(寺村輝夫・作/永井郁子・絵/あかね書房)。2024年9月には、最終巻から33年ぶりに新作『わかったさんのスイートポテト』(寺村輝夫・原案/永井郁子・作絵/あかね書房)が出版されました。
わかったさんの挿絵を手がけてきた絵本作家の永井郁子さんに、新シリーズ出発のきっかけを伺いました。
スピンオフ作品で、寺村輝夫の世界を読者に伝え続けたい
――『わかったさんのスイートポテト』を出版することになった経緯をお聞かせください。
永井 わかったさんのグッズを発売したことがきっかけなんです。絵本の世界をモチーフに商品を企画・販売するEHONSさんからあかね書房にオファーがあって実現したんですけど、キーホルダーや一筆箋、アクリルスタンドといった商品が人気で、発売を機に100人くらいの規模のサイン会が企画されました。
サイン会はすぐに予約が埋まるほどの人気ぶりで、後から聞いたら「夫婦で100回くらい電話をかけて、なんとか予約が取れた」という人もいたみたい。会場では感動のあまり涙ぐんでくださる方もいて、改めてわかったさんの人気を感じました。
わかったさんは、読者にとって子どもの頃の幸せな思い出のひとつなんですね。「レシピをもとに、母と一緒にお菓子を作った」「今でも仕事が辛い時に読んで、癒されている」、ときには、「わかったさんをきっかけに、今はパティシエとして働いている」という方もいて、本当に嬉しかったんです。それで新作を作ることを考え始めました。
――しかし、わかったさんの著者で児童文学作家の寺村輝夫先生は2006年に亡くなられています。
永井 そうですね。だからまずはスピンオフ作品を作る意向を寺村先生のご家族にお話ししました。そうしたら、とても喜んでくれたんです。やっぱり、寺村先生の作品をずっと忘れないでいてほしい気持ちは同じで。
スピンオフでも新作が出れば、ついてきてくださる読者の方もいらっしゃいます。私にとって、わかったさんは自分の人生と共にあった作品ですし、女神のような存在。挿絵画家としてこれだけたくさんの方に読んでいただける作品に出会えることは、めったにありませんから。
2024.09.13(金)
文=ゆきどっぐ
撮影=山元茂樹