北口は自分が予選を突破できなかった大会では、頬に小さなチェコ国旗をペイントして、チェコ選手を応援していたこともある。「知っている選手を応援するのは自然なこと」と北口は言う。

 

北口のチェコ語とやり投げスキルを育てた街ドマジュリツェ

 セケラークのチームは、地元サッカーチームのスタジアムをときどき練習で使っている。このチーム「イスクラ・ドマジュリツェ」は、かつてヴィッセル神戸に所属していたホルヴィことパヴェル・ホルバートが昨シーズンの監督を務め、リーグ2位の成績を残している。

 セケラークは「ここにも日本とのつながりがありますね。私たちはドマジュリツェのあらゆるところで練習していて、街全体が力を貸してくれています」と笑う。

 セケラークのチームで練習し、同じカフェに通い、同じスーパーで買い物をし、同じレストランで食事をし、北口のチェコ語とやり投げのスキルはこの街の人々に囲まれて育っていった。8月12日の祝賀会でセケラークは笑顔でこうスピーチした。

「未来が私たちにまだまだすばらしい成果を見せてくれることを願っています。より高いところにあるのは何でしょう? シュポターコバーの世界記録を塗り替えること。それに向けて私たちは努力を重ねますので、またここでみなさんとこんなふうに会うことになるでしょう」

 いよいよ来年は、北口とセケラークが二人で最初に設定した目標、東京2025世界陸上の年である。

2024.08.30(金)
文=梶原初映