この記事の連載

 ひとつひとつの質問を噛みしめるように受け取りながら、時間をかけて答えを探していく姿がとても好印象の玉置玲央さん。インタビュー後編では長く舞台に立ち続けている玉置さんの舞台やお芝居に対する考え方や役作り、そしてプライベートの過ごし方などについて質問。推し活についてもお話を伺いました。

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自分にとって一番「居心地のいい場所」は……

――玉置さんと言えば、昨年出演されたNHKドラマ10の『大奥』の黒木役やNHK大河ドラマ『光る君へ』の藤原道兼役などドラマ作品でも目覚ましいご活躍ですが、ご自身の中でブレイクのきっかけみたいなものはありましたか?

 ありがとうございます! どうでしょう。あまり自分で感じたり、考えたことはないかもしれませんが、直近で言ったら『光る君へ』はものすごく多くの方に観ていただいて、いろんな反響もいただいたので、『光る君へ』なのかもしれませんね。

 いろんなインタビューでも答えたのですが、『光る君へ』の道兼はこういう人物で合っているのかなと、ずっと探しながら取り組んできたんです。手応えがなかったというわけではありませんが、模索しながら向き合ったので、ターニングポイントというのはピンとこないというか……。

 それこそ、『大奥』の黒木は、自分で言うのもなんですが、「いい仕事してやったぜ!」と思ったりしましたけど(笑)。

――道兼と黒木は同じ時代劇という括りにはありますが、時代も異なりますし、方やダークな役で片方は善人です。役作りはどのようにされていますか?

 例えば、『大奥』には原作があるので、原作から拾えるものを拾い、台本に書かれている情報から拾えるものを拾い、そのうえでまず、一回リハーサルで自分の手札を出してみて、ディレクターや監督の方の手札と擦り合わせる作業を行います。

 自分であまり完成させないようにして、共演者や監督とのやり取りで最終的に形を作っていくという方法が多いのかなと思います。

――映像作品でもご活躍されていますが、今年はすでに2本の舞台に出られていて、今回が3本目。舞台に出演され続ける、玉置さんの想いを教えてください。

 舞台は、身体的にもメンタル的にも大変ですし、そんなにやらなくていいんですよね(笑)。おかげさまで映像のお仕事も増えてきましたし、いろんな知り合いも増えてきて、メインのフィールドを変えてもいいのかもしれないとも思ったりもします。舞台をやらないで、映像に専念する、とか。

 でも、どうして自分が舞台をやるんだろうって考えたときに、結局一番居心地がいいのが舞台だからだと思うんです。じゃあ、“居心地”ってなんだろうってことですが、それは、はっきりとはわからなくて……。でも感覚で言うなら、呼吸しやすいとか過ごしやすいとか、泳ぎやすいとか、そんな感じ。日常生活に伴ったリズムを作りやすいというのもあります。

 舞台は観客の方に目の前で“体験していただく芸術”なので、そこもやっぱり好きなんですよね! 目の前に受け取って下さる方がいて、今、その場にいてその方々に対して少しでも“影響”することができる。何かを渡すことができるんです。それを受け取ってくださるのも嬉しいし、それらがすべて目の前で起こっているという事実も好きなんです。

2024.08.11(日)
文=前田美保
写真=佐藤 亘
ヘアメイク=西川直子
スタイリスト=森川雅代