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 杉原愛子さんは、2016年リオデジャネイロ、2021年東京とオリンピック2大会連続で出場経験があるトップ選手。2023年には、これまで定番とされてきた“ハイレグ”に続く体操ユニフォームの新たな選択肢として日本初のスパッツ型レオタードの「アイタード」を考案し、話題を集めています。

 「誰もが安心して、楽しみながら体操競技に取り組めるような環境を作りたい」という杉原さんに、アイタード誕生の背景について聞きました。(インタビュー【後篇】を読む)


東京オリンピックで「ユニタード」に衝撃を受けた

――4歳で体操をはじめた杉原さんにとっては、ハイレグのレオタードを着ることはずっと当たり前だったと思うのですが、いつ頃から違和感を覚えるようになったのでしょう?
 
 子どもの頃から、レオタードから下着が見える・見えない問題はありました。練習中はレオタードの上にショート丈のスパッツを穿いているので気になりませんが、試合の時は友達とチェックし合っていました。

 違和感というか、ちょっといやだなと思うようになったのは生理が始まってからです。
生理中に試合が重なった時は、下着からナプキンが見えていないか、不安やストレスを感じるようになりました。でも「これしかないから、しょうがない」という感覚だったんです。

――そこから大きく一歩踏み出して「アイタード」を開発されたのは、何かきっかけがあったのでしょうか?

 東京オリンピックで、ドイツの選手たちが足首まで覆われた「ユニタード」を着ているのを見た時に、そんな選択肢もあったのかと衝撃を受けました。

――確かにユニタードは衝撃的でしたね。盗撮被害を減らす上でも、効果的なのではと話題になりました。

 ただ、私はユニタードを選択しませんでした。理由としては、普段の練習では手が直接肌に触れているのに、試合でいきなり感覚が変わることで、宙返りや、太腿の後ろを持ったり、膝を持ったりする時に、滑ってしまいそうで不安があったからです。

 アイタードの開発に繋がったきっかけは、体操教室にお子さんを通わせている保護者の方から、「(性的な視線から守るために)自分の娘にレオタードを着せたくない」という声を聞いたり、「『そういう目で見てるんだろう』と言われるから、ファンであることを公言できない」という男性の体操ファンがいると知ったことです。

 子どもの頃から体操界にいる私としては、レオタードに憧れて体操をはじめるものだと思い込んでいたところもあったので、こうした外からの声はショックでした。

 そこから、練習着のようにレオタードとショート丈のスパッツが一体化したユニフォームがあったらいいよね、という議論になり、「アイタード」が生まれました。

2024.08.10(土)
文=河西みのり
撮影=佐藤 亘