宗教について学びたい、誰かに教えを乞うことはできないだろうか──。

 そんなふうに考えていたとき、文藝春秋に勤務する旧知の編集者と話す機会があった。「宗教を学びたいと思っている」と話したら、彼は「池上彰さんと対談してみませんか?」と提案してくれたのだ。こうして生まれたのが本書である。池上さんが持つ世界の宗教についての豊富な知見と、私が持つ経営学の知見をぶつけあって、互いに学び合うとともに、新たな視点を見つけようとしたのである。対談は盛り上がり、日を改めて何度も行われた。

 みなさんもご存じのように、池上さんは様々な分野で膨大な知識を持つ「知のモンスター」のような方だ。その池上さんがやさしく丁寧に解説をしてくださったおかげで、宗教についての入門書という意味でも、非常にわかりやすい内容になっていると思う。

 私のほうは、これからの経営・ビジネスを紐解く上で必須である最先端の経営理論を、できるだけ簡潔に解説するよう心がけた。また、ジャーナリストの池上さんが具体的な事象を豊富に紹介してくださるのに対して、研究者の私はその事象を抽象化、構造化して、メカニズムを俯瞰して眺めることができるよう試みた。

 結果、お互いの持ち味が生かされて、とても充実した対談シリーズとなったと思う。何より、宗教と経営を結びつけて論じるという、これまでにない本を生み出せたことに感慨もひとしおだ。池上さんには心より感謝している。

■宗教×経営の「掛け算」を楽しむ

 最後になるが、宗教や宗教学の専門家からご覧になると、本書の特に私の記述・発言には、不適切だったり未熟な部分が多々あるかもしれない。ご容赦いただきたい。私は池上さんと対談するまで、宗教についてはほぼ素人であった。今後も謙虚に学んでいきたいと思っている。他方で、経営学や経営理論は専門であり、本書を通じてその部分での不備や間違いは、すべて私の責任に帰するところである。

2024.07.30(火)