奇岩の間をゆらり揺られて「宿根木はんぎり」
![防波堤のない広大な海へ。ギコギコと操縦しながら、ぐんぐんと沖へ進むはんぎり。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/6/a/1280wm/img_6aa4a113d78f7a20a5a1a7041d4331212099746.jpg)
宿根木は江戸時代から明治にかけて廻船業で栄えた町。最近は漫画『ゴールデンカムイ』の聖地巡礼で訪れる人も多いそう。佐渡は月島軍曹の回想シーンで彼の故郷として登場しますが、いご草ちゃんを捜索するために乗っていた舟「はんぎり(たらい舟)」は、ファンには鉄板の巡礼メニューになっています。
地元・小木弁の船頭が案内するクルーズ体験は、宿根木海岸ではためいている「はんぎり」という青いのぼり旗が目印。湾内をまわる手軽な15分コースから湾外まで行く70分コースまであり、長い年月をかけて大地がつくり出した複雑な岩礁地帯をゆったりと巡ることができます。
![はんぎりから箱メガネで海面を覗くと、海藻が驚くほどクリアに。宿根木の海は澄んでいて海底で採れる海藻やサザエまで見えます。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/2/d/1280wm/img_2de07ef331c11d01aed5b8bdef92e78f2683390.jpg)
![透明度が高い小木半島の海でのはんぎり体験は、時間や天候によって多様な海の表情を見せてくれます。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/9/9/1280wm/img_99af052cc5e9578cae868bd29678a5241387942.jpg)
はんぎりは、小木半島の人々の生活になくてはならない漁具で、桶の高さを半分に切って使ったことから、その名で呼ばれています。浅瀬でゴツゴツとした岩礁が入り組んでいる狭い海岸では、普通の船が入れず、小回りがきくはんぎりが大活躍。昔は嫁入り道具のひとつでもあったそう。
はんぎりの文化をもっと知ってほしいと、木舟づくりからクルージング、ガイドまで行っているのが、船頭の金子哲次さん。佐渡の大自然で育った杉と真竹だけを使い、昔ながらの製法で一艘一艘手づくり。小木たらい舟の製作技術は、国の重要無形民俗文化財に指定されています。
![金子さんのお弟子さんのなかには、フランスから1カ月限定で修行にやってきた女性も。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/b/2/1280wm/img_b22aed915d51342df0ba27d7b85812733770467.jpg)
![金子さんと相棒のアスティーくんはいつも一緒。特に体力づくりはしていないと謙遜されていましたが、取材後、アスティーくんとともにアップダウンのある山道をジョギングしている金子さんの姿を目撃!](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/a/e/1280wm/img_ae2fa5651b593f3da4c2af1917b4b3dd641173.jpg)
船頭が操るはんぎりに乗って、小木半島の海をスロウクルーズ。通常の船よりも海面に近いので、海がずっと身近に感じられ、一瞬で異世界へと誘います。篝火と竹灯篭を頼りにしたり、暗闇で青白く光る夜行虫を見たりできる期間限定ナイトクルーズも幻想的。
宿根木はんぎり
所在地 新潟県佐渡市宿根木393
電話番号 090-4835-5446
営業時間 9:00~18:00 ※期間限定ナイトクルーズ19:30~21:00
定休日 11月下旬~3月中旬
https://www.jalan.net/kankou/spt_guide000000193989
実際にワカメやアワビの漁など現役ばりばりで使われている「たらい舟」。佐渡情緒を味わえるたらい舟体験は、小木港や矢島・経島などでもできます。
![小木港の力屋観光汽船では上手に操ると「たらい舟操縦士免許」が取得できるそう。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/5/6/1280wm/img_56b148d74e44ac3c00f031f5edcb54833594107.jpg)
![矢島体験交流館では、朱塗りの太鼓橋が美しい矢島・経島の風光明媚な入江の景色が楽しめます。予約をすれば磯釣りやイカの一夜干し体験も。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/a/2/1280wm/img_a281bb86203deefa4e6d9f1e5df01f413107385.jpg)
2024.08.05(月)
文=大嶋律子(giraffe)
写真=釜谷洋史