この記事の連載
- 【佐賀県・武雄温泉】〈前篇〉御船山楽園ホテル
- 【佐賀県・武雄温泉】〈後篇〉黒髪山陶芸村
温泉とサウナの相乗効果で、デトックス&リラックス
このホテルはサウナもすごい。サウナ界のミシュランといわれるサウナシュランで2019年から3年連続グランプリを受賞した。
大浴場「らかんの湯」には、真っ白なメディテーションサウナあり、よもぎの薬草スチームサウナあり、薪サウナあり。メディテーションサウナの中はアロマ氷のクーゲルを溶かして香りを蒸散させたり、御船山の天然水でロウリュをしたり、驚きと楽しみに満ちている。
2021年にできたときに話題を呼ぶも、一旦休止していた薪サウナが、1年3ヵ月かけて、今年3月に復活した。御船山の古石を積み上げたサウナストーンを地元の間伐材を使った薪を使って温め、輻射熱でアツアツである。御船山の天然水をかけるとセルフロウリュもできるが、木の床はつま先立ちでも熱いくらいなので、ひたすら目をつぶって座る。強力な熱気に包まれて、ブワッと玉の汗が噴き出してくる。
薪サウナで体が温まったら、水風呂へも行ってみよう。2024年3月に完成したタイルの水風呂には大きな浴槽にシャキッと冷たい御船山の天然水が張られている。水の中に入るとその冷たさで目が冴え、水のゆらぎが天井に映って、幻想的な雰囲気である。
窓の外に目をやると、太古の昔には海だった御船山の地層を眺めることができる。
「植物が育つ水と光、そして土壌を感じられる環境に身を置いて、自分が植物の種になった気分でサウナに蒸され、水風呂に浸かるイメージで入ってほしい」と小原嘉久社長は話す。
薪サウナの屋根には、御船山の土を敷き、鳥がフンをしたり、どんぐりが落ちたりといった循環する生命活動の中で、次第に緑化するように設計した。年月とともに自然と一体化する、森のサウナなのだ。
水風呂のあとは休憩室へ。みかんのドライフルーツ、塩を付けて食べるプリンのほか、デトックスウォーター(レモン、オレンジ、シナモンと、キウイ、りんご、ミント)、サウナ用に焙煎した温かい番茶、水出し緑茶などドリンク類も充実している。
暖炉では、さつまいもの自然な甘みがおいしいかんころ餅を炙って食べる。休憩室では体の曲線に沿って脱力できるリラックスチェアに寝そべって、優雅な時間が過ごせる。季節のよい時季には外へ出て涼むのも気持ちいいだろう。
「御船山ゆかりの僧・行基が、讃岐で造った古代サウナ『から風呂』も、江戸時代の庶民の風呂も蒸し風呂だった。サウナはフィンランドのイメージがありますが、日本古来の文化なんです」と小原社長。日本人が親しんできた蒸し風呂文化に想いを馳せ、究極のサウナを楽しもう。
2024.07.12(金)
文・撮影=野添ちかこ