第三作『黄金の烏』では、ついに若宮はこの山内を襲う大いなる敵と戦いを始める。そんな彼のそばにいるのは、『烏に単は似合わない』で選ばれた后と、『烏は主を選ばない』で得た腹心の近習だ。物語はここから大きくうねりを上げて流れ出す。そのプロローグが、初期二作なのである。

 ここからが本番だ。ここからもっと面白くなる。だからこの二作の時点で何かを断言するのを、私はうずうずしながらも堪えている。

 今言えるのは、「乗り遅れるな」に尽きる。あなたが面白い小説を探しているなら。「物語」が好きなら。

 八咫烏シリーズに、乗り遅れるな!

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※こちらは2015年に刊行された『烏は主を選ばない』(文春文庫)の解説の転載です。2024年5月現在、「八咫烏シリーズ」は12巻(うち2巻は外伝)まで発売中。

烏に単は似合わない 八咫烏シリーズ 1(文春文庫)(文春文庫 あ 65-1)

定価 858円(税込)
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烏は主を選ばない 八咫烏シリーズ 2(文春文庫)(文春文庫 あ 65-2)

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2024.06.12(水)
文=大矢博子