寅子が「モン・パパ」の歌唱に込めた怒りは、このカーニバル的なものの二面性の両方に向けられている。「強い妻」を自虐的に容認する温情的な父権主義と、それを追認する「スン」っとした女たちの両者に対する「はて?」が表現されている。

 本稿を書いている時点での最新第30話でのスピーチでは、寅子は「日本で一番優秀なご婦人」でないと門をくぐれない法曹界と日本社会──「一番なら入れてやる」という温情主義──に対して怒るのだ。

「モン・パパ」の歌唱には、そのような平等への願望と温情主義の拒絶がないまぜになっている。(以上のような二面性については、木俣冬のこちらの記事も参照。)

 そうすると、今後注目される男性登場人物は、裁判官の桂場等一郎ということになる。第1話の戦後の場面で寅子と対峙していた桂場は、表面上は性の平等ではなく法の純粋に適正な運用を原則として行動するように見える。

 物語が「法」そのものが踏みにじられる戦争という暗い時代に向かう中、彼はどのような男性性を帯びていくのか。彼は一体、寅子との関係において温情的父権主義の人となるのか、そうではなく、真に平等な社会を目指して寅子と共闘する人間になるのか、注目したい。

2024.05.27(月)
文=河野真太郎