毎朝のようにSNSのタイムラインを席巻している「虎に翼」。主演・伊藤沙莉(30)が日本で初めて弁護士になった女性を演じている。今作がこれまでの多くのリーガルドラマ(司法ドラマ)と違うのは、現役弁護士たちの心も掴んでいることだ。
「一体どこまで調べて脚本を書いてるんだ」「脚本侮っててすんませんでした」と絶賛する國本依伸弁護士に、『虎に翼』のどんなところがすごいのか話を聞いた。
――『虎に翼』の放送がある日はXに國本先生のポストが流れてくるのを楽しみにしています。弁護士としてどんなところにハマったんでしょう。
國本依伸弁護士(以下 國本) 日本のリーガルドラマは用語その他内容が不正確で、嫌な気分になることが多いのでほとんど観ないんです。だから妻から「次の朝ドラは日本で最初に弁護士になった人みたいやで」と聞いたときには、「伊藤沙莉めっちゃ好きやけど、司法ドラマなら観たくないなぁ」と思ってました。
でも『虎に翼』の1話を見たら「あれ? めっちゃ面白いやん」みたいになり、2話3話と見ていっても弁護士的に引っかかるところがほとんど出てこない。しかも面白い。しばらくは「俺はまだ騙されんぞ」と警戒していたんですが(笑)、すっかりやられました。
「あまりにマニアックで驚きました」
――「この脚本家はいったいどこまで調べて、この脚本を書いているのか?」と絶賛されていましたね。特に驚いたポイントはどこですか?
國本 例えば寅子の父親が巻き込まれた贈収賄事件、僕らが学んだ刑事訴訟法のテキストに「戦前は糾問主義だった」とは書いてあるけど、その「糾問主義」が具体的にどのようなものであったかまでは詳しく学ばない。実際、気になって当時の条文を探しても、ネットのどこにもなくて国会図書館のアーカイブでやっと画像が見つかるというようなマイナーさです。それをちゃんと調べて当時の手続きにしたがって刑事裁判を再現し、ドラマの場面にするなんてすごくないですか。
2024.05.24(金)
文=田幸和歌子