マカオを華やかに彩る才能豊かなマカエンセたち
西洋と東洋が入り混じるマカオの風景をさらに独特なカラーに彩るのが、マカエンセの存在だ。マカエンセとは、ポルトガル人の血をひくマカオ人のこと。16世紀半ばにマカオに定住したポルトガル人男性と、現地や近隣諸国(マレーシア、インド、日本など)出身女性との間に生まれた混血がルーツと言われている。
現在、マカオの総人口約69万人のうち、マカエンセは約1万人。全体の2%と少数派だが、その存在感は大きい。
マカエンセのひとり、カルロス・マレイロス氏は、気鋭の建築家、都市計画家、芸術家。マカオ愛と独自の世界観にあふれた作品は「グランド・リスボア・パレス・マカオ」のロビーにも展示されている。
マカエンセたちに伝わる言葉が、パトゥワ語だ。16世紀にマカオに暮らし始めたポルトガル人が、広東やマレー、インドネシア出身者とコミュニケーションをとるために母国語をアレンジしたもので、主に話し言葉として受け継がれてきた。
現在は話せる人も激減してしまったが、マカエンセたちが演じるパトゥア語の劇が、毎年5月に上演されている。その年の社会問題をテーマとしたコメディは、風刺あり、笑いあり。英語の字幕も用意されているし、ストーリー展開もテンポよく、言葉が分からなくても最高に面白いと大人気だ。
小さな街で、独自の文化を大切に受け継ぎ、楽しんでいるマカエンセたち。華やかなリゾートや歴史ある世界遺産、そして彼らの存在を知ることも、マカオの旅をより魅力的なものにしてくれるはずだ。
2024.05.24(金)
文=芹澤和美
写真=Lina Shigemitsu