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藤原季節と親友・義山真司のリアルな関係性や感情をフィクションに

――『東京ランドマーク』を撮ったのは6年前だそうですね。制作の経緯を教えていただけますか?

藤原 僕はEngawa Films Projectで林さんの撮る短編がすごく好きだったんです。ある時、僕も出演できそうになったのですが、直前でダメになってしまった。林さんの映画に出演する運命を逃してしまった。それならチャンスを取り戻さないと、と「林さんの映画に出たいです」と直談判しました。当時、林さんはフランスに住んでいらしたんですよね?

 はい。季節とのやりとりと別に、渡仏前に撮った映画で、義山真司がエキストラとして手伝いに来てくれたんです。そこで初めて真司と会って、すごく魅力的で映画を1本撮りたいなと思いました。そうしたら、その後、ふたりは実はすごく仲が良いということを知りました。

藤原 不思議な縁で、点と点が繋がったんですよね! 林さんが帰国してからは3人で頻繁に集まるようになりました。雑談みたいな感じで、真司と僕の関係や家族の話など、身の上話をしているうちに、ある日林さんが僕らの話をフィクションに取り込んで、脚本を書いてきてくれたんです。

 僕は、テーマを先に決めて撮るのではなく、その時に漠然と考えていることや悩みを、「撮る」という行為を通して、自然と考えが整理されて撮りたかったものを見つけていくというやり方をしています。

 また、この俳優さんだったら、どういう話がいいかな? というところから着想することが多いです。季節と真司の話を聞くうちに、彼らの置かれている状況のリアルな感情をベースに置いて脚本を書けば、キャラクターを自分ごとのように感じて僕よりも愛着を持って演じてくれるんじゃないかなと思いました。

藤原 (静かに頷いている)

 季節や真司も説明のつかない魅力を持っているんですよね。ただ、歩いて喧嘩しているだけでも画(え)になるし、撮りたくなります。僕が変な演出をつけるよりも、ふたりがただ話しているだけの方がよほど何かが伝わる気がしました。

2024.05.24(金)
文=黒瀬朋子
撮影=平松市聖