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 『空白』『ヒメアノ~ル』ほか、悲喜が入り混じった人間の不格好な真実の姿を描き続けてきた“人間描写の鬼”𠮷田恵輔監督。彼の最新映画『ミッシング』が、5月17日に劇場公開を迎える。幼い一人娘が公園から帰宅中に消息を絶って3カ月。懸命に行方を探す両親とふたりを取材する地方テレビ局員の姿を中心に、「親の真実」「マスコミの在り方」「ネット社会の現実」に斬り込んでいく骨太な一作だ。

 7年前に石原さとみが𠮷田監督に直談判し出演が実現したオリジナル作品。石原扮する沙織里の夫・豊役を務めるのは、『ゴジラ-1.0』での好演が記憶に新しい青木崇高。一児の父でもある彼は、どこまでもリアルで人間味に溢れた人物像をどう構築したのか。そして、現代社会をどのように見つめているのか――。率直な想いを明かしてくれた。

【後篇】「『お疲れ様でした』と車に乗ってからもずっと号泣で…」青木崇高が最新作の撮影で苦労した“あのシーン”


「父親なりたてほやほや」だからこそ表現したい役柄

――青木さんは「一児の親として読むのがとても怖い脚本だった」とお話しされていましたが、最初に出演のお話が来たときにはもう脚本があったのでしょうか。

 お話をいただいたときは企画書段階だったかと思います。ただ、𠮷田恵輔監督の作品は拝見していてどれもすごく面白かったので「ぜひやりたいです」とお返事しました。

 その後に脚本をいただいて――読んでいるときは自分が出ることを忘れていたような感じで世界観にどっぷり入り込んでいました。とても重く、辛くて悲しくはありましたが、その中に光が差す物語で、1つの作品として感動はしました。

――僕自身も親になったことで、自分の親としての感覚を抜きにして作品に相対することがなかなか難しくなってしまったのですが、青木さんはいかがですか?

 社会上では役者という立場ではありますが、とはいえ一人の人間ではあるため自分の生活や環境の変化によって心持が変わってきたところはあるかと思います。父親の役自体は以前からやっていますが、いずれはこうした作品をやるかもしれない……という気持ち自体はありました。『ミッシング』を受けないという選択肢は自分の中にはありませんでしたが、やっぱりとても繊細な作品ではあるので監督への信頼が大きかったとは思います。「𠮷田さんが脚本を書いて監督もされるのであればやりたい」という想いでした。

 自分自身もまだまだ父親なりたてほやほやの感覚ではありますが、この世界にしっかりと向き合ってあふれ出るものをちゃんと画面に表現したいという気持ちで臨みました。

2024.05.17(金)
文=SYO
撮影=榎本麻美