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 藤原季節さん主演の映画『東京ランドマーク』の公開がスタート。2018年に撮られた自主映画で、メガホンをとったのは林 知亜季監督。林監督と毎熊克哉さんが所属するEngawa Films Projectが製作した。

 まだ何者にもなっていない稔(藤原季節)とタケ(義山真司)が、高校生の家出少女の桜子(鈴木セイナ)と出会うところから始まる、青春スケッチ。所在なさ、家族との葛藤、コントロールできない感情……若者たちの心の痛みや揺らぎが我がことのように感じられ、彼らの表情がいつまでも脳裏から離れない、そんな映画。藤原さん本人と重なるような、リアルな25歳の姿がそこに刻まれていた。

 「今、撮りたい」という衝動からスタートした本作について、10年来の友人関係について、主演の藤原季節さん、林 知亜季監督、プロデューサーの毎熊克哉さんに語ってもらった。

【後編】「俳優は迷子になりやすい仕事」毎熊克哉が“出演していないのに”『東京ランドマーク』を応援するワケ


「この人、絶対に売れるな」と…

毎熊克哉 この3人の中で最初に出会ったのは林さんと僕で、15〜16年前になります。当時は林さんも役者をしていて、端的に言って、エキストラ以外に僕ら仕事がなかったんです (笑)。

 どうしたらいいだろうという中で、自分たちで撮れば、自分たちをメインキャラクターにした作品ができるんじゃないか? と、柾 賢志と佐藤考哲と俳優仲間4人で2008年に「Engawa Films Project(以下、Engawa )」を立ち上げました。林さんがカメラを手に入れて、最初に監督をやり始めた。世には出してないですけど、結成初期は林さんの出演作もありましたね。

林 知亜季 そういえば、ありましたね。

毎熊 そうしてEngawaで短編を撮って、「Engawa Times」というYouTubeチャンネルを始めた頃に、今度は季節と僕が出会いました。

藤原季節 小劇場の一般公募の舞台でした。僕が19歳の時、毎熊さんがEngawaの人たちに僕を紹介してくれたんです。

毎熊 Engawa の皆と合うんじゃないかなと思って。当時からいろんな俳優に出会ったけど、なかでも季節は特別輝いていたというか、「この人、絶対に売れるな」と思いました。人を惹きつける人だなと。

藤原 へえー(笑)。今、考えると当時の毎熊さんは20代半ば? 僕は今年31なので、出会った頃の毎熊さんの年齢をとうに越えちゃったんですよね。その後、映画『ケンとカズ』(2016年 小路絋史監督)に誘っていただきましたけど、もし今、あのカズを演じるような年下の俳優が現れたら、脅威を感じると思います。

 そのくらい毎熊さんは当時から老成していたというか、黙っていても雄弁に何かを伝えられるような、沈黙の似合う男でした。

毎熊 (笑)。林さんと初めて出会ったのはとあるワークショップですけど、鮮明に覚えています。俳優を目指す若者がたくさんいる中で、場違いなくらい、独特のオーラを放っていた。「変なやつが来た」という印象でした。

 昔から、周囲には変人扱いされてました。

毎熊、藤原 (笑)。

 それで、アメリカの高校に行かざるを得なくなったところも。でも、アメリカでも退学になったから……。今は、今いる知り合いを大切にしておこうと思っています(笑)。

2024.05.24(金)
文=黒瀬朋子
撮影=平松市聖