この記事の連載
- 「TXQ FICTION」#1
- 「TXQ FICTION」#2
テレビ愛を込めたかった
皆口 テレビ番組でフェイクドキュメンタリーをやるとなったときに、最初に浮かんだアイデアが“テレビ番組の中でテレビ番組をやる”というものでした。というのも、フェイクドキュメンタリーは低予算でも撮れる手法ですが、このアイデアの場合はテレビ番組の潤沢な予算がなければできないものなので。
あとは自分のテレビ愛を込めたかったという側面もありますね。自分、テレビっ子なんですよ。「ゾゾゾ」はかつてゴールデンタイムでやっていたオカルト番組のオマージュですし、「フェイクドキュメンタリーQ」は深夜に人知れずやっていたホラー番組のオマージュです。
――フェイクドキュメンタリー番組で自ら“フィクション”と名乗ることは枷にもなる気がしたのですが、あえてそう名付けた理由を伺いたいです。
皆口 フィクションと現実の境目を曖昧にすることは演出の一環として目指すべきところですが、フィクションと銘打っておかないと本当のことだと勘違いする人が出るからです。
大森 これはテレビというメディアだから強調した部分でもあります。例えば、「フェイクドキュメンタリーQ」と本作では視聴者との出会い方が違います。つまり、YouTubeは利用者の検索によって能動的に作品に近づく傾向が強いですが、テレビは偶然見てしまう受動的な傾向が強いメディアです。
時間帯を考えると本作の視聴者数はだいたい30万人ほどと予想されるのですが、そのうちの大半は何も知らずに見る人でしょう。その人たちにフィクションだと銘打った上で、ウェルメイドなフェイクドキュメンタリーを届けたいと思いました。
――では「TXQ FICTION」の「TXQ」にはどんな意味合いが込められているのですか。
大森 実を言うと私が最初の企画書で仮に書いていた名前が「TXQ FICTION」だっただけです(笑)。「FICTION」の部分は文字通りフェイクドキュメンタリーを指していて、「TX」はテレビ東京の略称、「Q」は「フェイクドキュメンタリーQ」から取っています。
2024.05.07(火)
文=むくろ幽介
写真=細田 忠