この記事の連載
うつわのある暮らしには憧れるけれど、どんなふうに集めていったらいいんだろう……? うつわを手軽に、上手に暮らしに取り入れるためのヒントを求めて、達人たちを訪ねました。
◆Vol.12 お話を聞いた人 山田英季さん
料理家、and recipe 代表。東京都生まれ、兵庫県育ち。フレンチやイタリアンなどの料理人を経て独立。空間や食イベントのプロデュース、レシピ本の著述、メニュー開発など多岐にわたり活躍する。
https://andrecipe.tokyo/
旅先でうつわを買うのが好き
旅が好きなんです。
多いときだと、国内含めて1年で10回はするでしょうか。旅先でうつわを買うこともすごく多いですね。どこかへ行くときは必ず現地のフリーマーケットや料理道具の専門街、そしてのみの市を訪ねています。例えば「パリ 合羽橋」みたいに検索すると、必ずどこかしら出てくるんですよ(笑)。
これはいつだったかな、イギリスのカーブーツセールといわれる、いわゆるのみの市で買ったものです。ロンドンで開かれていた市で。もちろん紅茶を入れて、スコーンをのせてもいいけど、違うものをのせたらどうなるだろう……と想像するのが好きなんですね。和菓子をのせてもいいかもしれない、あるいはまったく違うものを置いてみようか、と。
これもカーブーツセールで手に入れました。銅製の立派なものです。売ってる人に「こんないいもの売っちゃうの?」と訊いたら「私のおばあちゃんがこれでジャムを煮ていたんだけど、私はジャム作りをしないから、誰か使ってくれる人がいたらいいなと思って」と。じゃあ僕が買うよ、とすぐ決めて。帰国してこれであんこを炊きました。そんなあれこれを、みやげ話で誰かにするのもいい。そういうエピソードが味の印象をさらに良くしてくれることもあります。
2024.04.25(木)
文=白央篤司
撮影=平松市聖