この記事の連載
文化都市としての地位を確立しているこの街は、“今、食で面白いのはメルボルン”と世界のフーディーから注目されている存在。成熟した街の証でもある芸術タウンとしての魅力にも触れながら、人生を豊かにしようというオーストラリアの人々のパッションを感じる旅へ。
世界で磨いた感性を芸術的な一皿に映す
◆Vue de monde(ビュー・ド・モンド)

レストランの心臓部といえる厨房は、ディナーに向けてチームが一体となって仕込みをし、時折笑い声が響くなど活気に満ちた光景が広がっていた。その躍動感が繊細で美しい料理へと形を変え、愛らしいブルーの花を添えたアボカドやハーブが入ったタルトなど、その景色を観ていたくなる芸術的なプレートで供される。
「ビュー・ド・モンド」の総勢約30名のメンバーを取り仕切るのは29歳のヒュー・アレンシェフ。メルボルン生まれの彼は15歳の時に見習いとして働き始め、2年後にこの店のスタッフに加わった。才能はすぐに開花し料理アワードで賞をとるなど活躍し、20歳の時にデンマークの伝説のレストラン、NOMAでさらなる高みを目指す。

様々な経験を積み、この店に戻った翌年の2019年、23歳の若さで総料理長に就任した。以前まではクラシカルなフレンチだったが、オーストラリアを意識した新しいスタイルを追求しているという。


今年、豪州のレストラン評価の指針となるAGFG主催の2024年レストランアワードにおいて3シェフハット(最高レベル)を獲得。
全国で3店舗のみが選ばれたことに対し「僕ひとりの力ではなく、このチームがいてこそ」という姿勢と生真面目さが人々を惹きつける。
店がある55階からの澄んだ景色のような眩い未来を彼がどう彩るのかが楽しみだ。



Vue de monde
所在地 55 Rialto Towers, 525 Collins Street Melbourne
電話番号 03-9691-3888
https://vuedemonde.com.au
2024.04.18(木)
文=梅崎奈津子
写真=橋本 篤
コーディネート=池谷仁美
CREA Traveller 2024 vol.2
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。