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現代アート美術館「ACCA」ディレクターが語る「この街は芸術のコスモポリタン」

 2000年頃から現代アートの美術館ができ始め芸術の土壌が培われてきたメルボルンのアート。「ACCA」のマックス・デレーニー氏がその背景とアートスポットの見どころを教えてくれた。


現代アートが躍動 創作環境も整っている

 私がディレクターを務めているACCAはメルボルンの現代アートのリーダー的な役割として、今観るべきアーティストの作品をキュレーションし、展示会を行っています。年4回のペースでソロ、グループ展を開催し、トークショーやパフォーマンスなどのプログラムを企画して、素晴らしいアートワークの魅力を発信しています。

 1983年に設立したACCAがこの場所に移ったのは2002年。同じ年に博物館、美術館、ギャラリーやショップなどが集まったフェデレーションスクエアが誕生するなど、そのころがまさしく街とアートシーンのターニングポイントでした。1861年創設のNGV(ビクトリア国立美術館)を始めとした優れたアートスペースなどが培ってきた土壌に、コンテンポラリーアートが躍動し、フィールドが広がったと言えます。

 多くの移民を受け入れ、国際的な多文化主義の歴史を持つこの街は、海外のアーティストが移住しているケースも多いですね。クリエイターにとっては、メルボルン市がアーティストに制作スタジオ提供するといったサポートがあるうえ、不動産価格がシドニー市に比べて多少リーズナブルという点が、創作活動に集中できる環境が整っているように感じます。

 また、忘れてはいけないのが、ここが先住民であるアボリジナルの人々の芸術、生活文化が数千年にわたり存在している場所であること。近年では新世代の芸術家たちが、受け継がれてきた精神を大切にしながら、アート、文学、音楽、映画といった幅広いジャンルで活躍し、クリエイティブの舞台を盛り上げています。メルボルンを訪れたら、現代アートなどで、彼らの作品に触れてほしいですね。

 このようにメルボルンには数多くのアートスポットがあるので、旅行で訪れる方たちのために、歩いて巡れるアートルートを紹介します。芸術地区にあるACCAからスタートし、セント・キルダ・ロードを北上し、スワンストン・ストリートを進み、ドーム型の素晴らしいリーディングルームがあるState Library Victoriaまで行くコースです。王道の美術GV文化遺産に触れられるKoorie Heritage Trust、小さなギャラリーやアーティストのアトリエが数多く入ったThe Nicholas Buildingなど、様々なクリエイティビティに出合うことができます。

 通りには歴史的建造物のほか、おしゃれなカフェやレストランもあるので、散策するのに楽しいエリア。少なくとも半日あれば回れると思うので、巡りながらメルボルンのアートの息吹を肌で感じ取ってください。

1. Australian Centre for Contemporary Art (ACCA)

メルボルンを代表する現代アート美術館。ウッド・マーシュ氏の設計による建物は、特徴的なフォルムで“芸術の実験室〟の意味合いを込めて造られたという。展示会は年に4回のペースで行われ、国内外のアーティストの制作サポートを行うなど、新たなアートシーンが生まれる場になっている。

2. Buxton Contemporary

メルボルンで最も古い美術学校、ビクトリア美術大学内にある美術館で、マイケル・アンド・ジャネット・バクストン財団が寄付したオーストラリアの現代美術作品を展示している。アーティストによる個展やテーマ別の展覧会や学習プログラム、出版事業などを行う。
https://buxtoncontemporary.com

3. NGV International

オーストラリアのアート界で最も重要な公立美術館であり、現代美術、デザイン、ファッションに加え、日本美術の常設ギャラリーを含む、欧州、アジアなどの世界のコレクションを観ることができる。建物は、水壁の入り口や大広間のステンドグラスの天井など見どころが多い。
https://ngv.vic.gov.au

4. Koorie Heritage Trust

オーストラリアの先住民族の芸術と文化を学び、様々な体験ができるアボリジナル文化団体の施設。工芸品や芸術作品が展示されている他、歴史や生活文化に触れられるツアーを開催。隣接のアボリジナルレストラン「Mabu Mabu」は誰もが認める質の高さ。
https://koorieheritagetrust.com.au

5. Australian Centre for the Moving Image(ACMI)

フェデレーションスクエアにある映像とビデオアートの博物館。最新鋭の巨大スクリーンに映し出されるデジタルアートや国内外のインディペンデント映画上映、テーマを掲げたフェスティバル、トークイベントなどを開催している。テクノロジーの進化も知ることができる。
https://acmi.net.au

6. The Ian Potter Centre NGV Australia

NGVのコレクションのうちオーストラリアのものを集めた美術館で、絵画、彫刻、ファッションなど2万点以上の作品を所蔵。植民地時代から現代まで、歴史の軌跡を辿ることができる。なかでもアボリジナルの現代アートギャラリー「ウルダ・マラ」はぜひ見てほしい。
https://ngv.vic.gov.au

7. The Nicholas Building

1926年に創設されたこの建物は文化遺産として知られており、中には200を超えるアーティストのアトリエやギャラリー、ファッションやジュエリー店などが入っている。特に書店「ワールド・フード・ブックス」は、前衛的な出版物がセレクトされ、刺激をもらえるスポット。
https://nicholasbuilding.org.au

8. State Library  Victoria

1854年に設立された州立図書館で、八角形のドーム型の美しいリーディングルームは、本を自由に楽しめる場所。社会史、文化史などの膨大なコレクションが揃っており、メルボルンの作家なら、ヘレン・ガーナー、クリストス・ツィオルカスなどの作品から読み始めるのがおすすめ。

Max Delany(マックス・デレーニー)

2016年にオーストラリア現代美術センター(ACCA)のアーティスティックディレクター兼CEOに就任。着任前はビクトリア国立美術館で現代美術の上級キュレーターを務めていた。様々なクリエイターとのネットワークを持つ。

ACCA

所在地 111 Sturt St, Southbank Melbourne 
電話番号 03-9697-9999
営業時間 10:00~17:00(土・日曜 11:00~17:00)※月曜は予約制
定休日 無休

2024.04.22(月)
文=梅崎奈津子
写真=橋本 篤
コーディネート=池谷仁美

CREA Traveller 2024 vol.2
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

Dreaming of Australiaオーストラリアが教えてくれたこと

CREA Traveller 2024 vol.2

Dreaming of Australiaオーストラリアが教えてくれたこと

定価1,500円(税込)

「CREA Traveller」2024 vol.2の特集は、「オーストラリア特集」。