腸内で有用菌(いわゆる善玉菌)が食物繊維を食べると、短鎖脂肪酸を生み出し、肥満を防ぐ作用がある。

「本来は腸のどの場所でも短鎖脂肪酸をつくり出せるのが理想です。不溶性・水溶性の両方の食物繊維を含む納豆は、腸をはじめ体全体に良い働きが期待でき、ダイエットをはじめさまざまな健康美容効果があるでしょう」(岸村氏)

 

肥満防止にも期待が

 前述した大豆レシチンも肥満防止に働く。

「大豆レシチンは脂質代謝を改善したり、小腸でのコレステロール吸収を抑えます。また大豆イソフラボンも悪玉コレステロール低下作用があり、相乗効果で肥満改善が期待できるでしょう」(望月氏)

 そして低カロリーであるのに、タンパク質も十分に摂れるという点でもダイエット向き。

「納豆は1‌0‌0gあたり1‌9‌0kcalで、タンパク質は14.5g含まれています。同量の豚バラ肉ですとタンパク質が12.8gで、カロリーは3‌6‌6kcalも。その上、納豆の脂質は豚バラ肉の3分の1以下で、タンパク質を代謝してくれるビタミンB6、脂質を代謝するビタミンB2もしっかり摂れます」(岸村氏)

 ちなみに納豆には「若返りのビタミン」として有名なビタミンEも含まれ、肌や血管の老化を防ぐ。

いつ摂取するのが効果的?

 さて健康効果としては、納豆による「骨の健康維持」と「血液サラサラ」がよく知られている。

 管理栄養士の堀知佐子氏(老舗料亭「菊乃井」常務取締役)がこう話す。

「納豆には骨を丈夫にするカルシウムだけでなく、カルシウムが骨に沈着するのを助けるビタミンKも含まれます。ビタミンKには緑野菜に含まれるK1と、納豆に含まれるK2がありますが、骨に役立つのは圧倒的にK2。これは納豆に豊富に含まれます」

 血液サラサラの正体は、ナットウキナーゼという酵素。納豆は蒸された大豆が納豆菌によって発酵することでできるが、この発酵過程で生成されるのがナットウキナーゼで、血中にできた血栓に働きかけ溶解する作用、血栓をできにくくする成分を増やす作用、降圧効果ももつ。こういったナットウキナーゼの効果を求めるなら、夕食に摂るのがお勧めだ。明け方は体内の水分が少なくなるので血栓ができやすく、心筋梗塞や脳卒中の発症率が高いため予防になるだろう。

2024.03.25(月)
著者=笹井恵里子