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型染カレンダーの圧巻の展示で春のモチーフを探そう

 3階では、染色家・芹沢銈介の作品を一堂に集めた特集展示が目を引きます。黒い背景に整然と並べられているのは、じつに10年分の型染カレンダー。芹沢銈介は、戦後間もない1945年から最晩年にいたるまでの40年近くものあいだ、途切れることなく型染カレンダーを制作し続けました。

「色鮮やかでかわいいですね。四季折々さまざまなモチーフが描かれている中から、春を見つけて楽しむのも風情があります」(一色さん)

 芹沢のカレンダーは日付と曜日があうものを今でも毎年復刻して販売しているそう。

満開の桜の下をそぞろ歩きするような心躍るひととき

 続いて一色さんは2階の第12室へ。こちらに展示されている春の作品は、2001年から2002年にかけて制作された児玉靖枝の油彩画シリーズ《ambient light ― sakura》です。

 「ambient light」とは「包囲光」を意味し、今回の春まつりでは、見上げる、見下ろすなど異なった視点から桜を見た作品4点が展示されています。「鑑賞者が画家の眼差しを通して桜の気配を追体験できるよう、配置を計算して展示しています」と成相さん。

「確かに、展示の位置や高さが絶妙で、満開の桜の下を歩いているような感覚を味わえます。先ほど見た日高さんの桜の樹が花開いたみたいに錯覚してしまいそう」(一色さん)

 この展示室では、作者が自身の作品について語っている「アーティスト・トーク」も作品と並んで上映されています。作品への理解をいっそう深めてくれる貴重な映像です。

2024.03.16(土)
文=張替裕子(Giraffe)
写真=杉山秀樹