お酒も料理も西村さんのこだわりが詰まったブンカ堂の“味”

 南口エリアの「おでん二毛作」(現:おでんの丸忠)に約14年勤めたあと、2018年12月にブンカ堂をオープンさせた西村さん。客席は厨房からつながる10席の“ニの字カウンター”のみで、訪れるお客たちの間で自然と会話が生まれる。お客同士の会話を聞いていないようで聞いている、西村さんのシュールな返しも店の名物だ。おでんの店から独立した西村さんだが、ブンカ堂のメニューにおでんはない。素材を生かした創作料理と選び抜かれた純米酒、体にやさしいナチュラルワインを扱う。

 実は二毛作ではおでん作りに携わっていなかったので、ブンカ堂でおでんをやろうとは全く考えてなかったんです。でもやっぱりおでんの店から独立してるから、来てくれた人から「あれ? おでんやってないんだ」と言われることもありました(笑)。常連さんに人気の「豚バラ生姜焼き」は、南口エリアに昔からあるお肉屋さん「愛知屋」さんの豚バラを使っています。お酒に合う濃いめの味付けがこだわりです。

 お酒は、自分が好きな純米酒やナチュラルワイン、ウイスキーなどを中心に置いています。日本酒は、若い頃先輩に飲まされて気持ち悪くなった思い出があって、もともとは大っ嫌いだったんです。でも当時の二毛作の常連さんが「いいお酒あるよ」と「生酛のどぶ」を持ってきてくれて、飲んでみたらめちゃくちゃうまかった。

 それで「どこで買えるんですか?」と聞いて教えてもらったのが、今もお酒を仕入れている千駄木の「リカーズのだや」さん。次の休みにお店に行って事情を話したら、特別にいろいろとお燗して試飲させてくれて。そこで気になった「神亀」と「竹鶴」、そして「生酛のどぶ」は、今でもお店に置いています。ナチュラルワインを置くようになったのも、のだやさんが面白さを教えてくれたからです。

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2024.01.21(日)
文=石橋果奈
写真=深野未季