つゆをひとくち。まず昆布や鰹節を主体にした出汁がグンと香るスッキリしたタイプだ。久しぶりの関西のつゆである。そして牛肉がたっぷり。つゆでじっくり炊いた牛肉は脂身の部分もすこぶるのうまさだ。途中から京都原了閣の黒七味で味変して一気に完食だ。そして梅おにぎりをかじりながらつゆを飲む。これは堪らない口福感である。結局おつゆを全部飲んでしまった。

 店の人に訊くと、インバウンドの客が最近はすごく多いそうで、英語の勉強もできるとか。白米や玄米で作ったおむすびのテイクアウトが相当人気で、1日に何度も店内で作っているそうだ。関西つゆが飲みたくなったら、いざ秋葉原の「一のや」へGOである。

INFORMATION

「肉そばとおにぎり 一のや アキバトリム店
住所:東京都千代田区神田佐久間町1-6-5  アキバトリム1階
営業時間:7:00~23:00
定休日:なし

 

肉のうまさが炸裂! 椎名町「南天」

 師走に入った平日の午前中、久しぶりに椎名町の「南天」に行ってみた。西武池袋線にのって池袋から1つ目の駅である。下車した人が5人いたのだが、そのうち2人は「南天」に突撃していたという事実が凄いと思う。

 お店の方に挨拶して、「肉そば」(500円)を注文した。午前10時までは玉子がサービスだとか。温泉玉子入りの少し小ぶりのどんぶりだが豚肉がドッサリのった一杯が登場した。これだ、このビジュアル。まずつゆをひとくち。

 こちらもあっさりとした関西風のつゆである。このつゆは実はあり得ない方法で作られている。大量の玉ねぎを煮る。そして豚肉をバラだけでなく赤身なども混ぜてグツグツ煮る。それを合わせてベースを作り最後に出汁を合わせるのだ。つまり、まったく日本そばのつゆの作り方とは違う方法なのである。

 店主の湯浅さんは洋食畑で修行した方でステーキなどの調理はお手のものだったとか。肉じゃがのようなそばつゆの味を目指したというところが天才的発想だ。そして、そばは平打ちの自家製麺。肉もいい具合の柔らかさ。そばに肉をこれだけおいしく調和させた人は湯浅さんだけだと思う。

2023.12.28(木)
文=坂崎仁紀