しばらく行ってなかった老舗の立ち食いそば屋。味は昔のままかなあとタカをくくっていたら、驚くほど旨くなっていたという出来事が先日あった。今回はそんな進化した老舗立ち食いそば屋の話である。

京成高砂駅北口を降りてすぐ

 場所は京成本線の京成高砂駅。駅北口を降りたところにすぐに「立喰そば 新角」という老舗の立ち食いそば屋がある。知り合いの立ち食いそばの達人が足繁く通っている人気店である。十数年ぶりにうかがうと、店主の佐藤友法さん(59歳)と奥さんの美代さんがにこやかに迎えてくれた。

 以前は今より路地を進んだところで営業していたが、現在は駅前の階段を降りたすぐの便利な場所に移転していた。店は6人も並べばいっぱいになる狭小カウンターの立ち食い店である。外観の様子は当時とあまり変わらない記憶である。

 おいしそうな天ぷらがケースに並ぶ。午後1時過ぎの訪問だったので、ご夫婦で天ぷらを揚げているところだった。

人気メニューは…?

 人気メニューを訊くと「紅しょうが天そば」、「かき揚げそば」、「にんにく入りかき揚げそば」、「ほうれん草・あげ玉そば」そして「ラーメン」、「紅しょうが天ラーメン」だという。紅しょうが天は40年前からの人気者だとか。

 さっそく挨拶し秘かな人気メニュー「ほうれん草・あげ玉そば」(490円)を注文しながら、店の歴史などを訊いてみることにした。

 

「新角」は古参の立ち食いそば屋

「新角」という名前の店は高砂の他に有楽町駅のガード下にあった。1970年頃、京成高砂の「新角」はオープンした。その初代のオーナーはその後、有楽町店を経営するために高砂の店を1980年頃、佐藤店主の父、計次さんに譲渡したという。

 そして1993年、友法さんが28歳のときに店を引き継ぎ、阪神淡路大震災の直後に計次さんが亡くなってからは奥さん、従兄弟で店を切り盛りしているという。

細い生そばがうまい

 さっそく「ほうれん草・あげ玉そば」が登場した。まずつゆをひとくち。これは上品で奥深い味である。以前とは違う気がする。友法店主に訊くと、出汁はムロアジ節をメインに宗田鰹節、鯖節を使っているとか。ムラサキ色の鮮やかなつゆである。

2023.11.14(火)
文=坂崎仁紀