くるりが「東京」や「ばらの花」といった名曲を生み出したオリジナルメンバーで、ニューアルバム『感覚は道標』をリリース。10月13日には、このレコーディングの様子を追ったドキュメンタリー映画『くるりのえいが』が劇場公開およびデジタル配信されます。
これまで古今東西さまざまな音楽に影響されながら、旅を続けてきたくるり。バンドが20年ぶりに、ゼロからイチを生み出した“くるりの原点”に立ち返った理由はなんなのか。オリジナルメンバーである岸田繁さん、佐藤征史さん、森信行さんに話を聞きました。
ゼロから3人だけでやってみたい、と思った
──今回、オリジナルメンバー3人で約20年ぶりに楽曲を作ることになった経緯を教えてください。
岸田 繁(Vo, G) 近年、打ち込みでデモをしっかり作ったり、オーケストラと一緒にやったり、そういう感じで曲を作ることが多かったんです。そうじゃなくて、このバンドを始めた時にやっていた、全くゼロの状態から3人だけで始めてみる。そういうセッションで作るやり方に一回立ち返りたいなというのは、これまでもたまに思っていて。今回いいタイミングだったので、やってみたいなと。
──それは、この3人で作るということが大事だったんでしょうか?
岸田 人間関係とかっていうよりは、作り方ですよね。3人でセッションしながら曲を作るというのは、くるりの一番基本のとこで。そのやり方でしか作れないものがあるので、そこにもう一回トライすることに興味がありました。「じゃあそれをもっくん(森)じゃない別の人とやればいいじゃないか」という人がいたとしたら、それもまたちょっと違って。25年以上あるくるりの歴史の中だと、もっくんとやっていた6年間はほんの短い時間ですけど、その間の実績と経験っていうのは、バンドの歴史の中でも大きいんですよね。だから……でかいけど、彼を召喚したという。
森 信行(Dr) 召喚されました(笑)。
くるり3人のそれぞれの旅の思い出・森さん
くるりってレコーディングでいろんなところに行くんですけど、2001年頃にロンドン近郊に行ってアルバム(4thアルバム『THE WORLD IS MINE』)のレコーディングをしたのが一番大きな思い出ですね。スタジオが牧草地帯にあったんですけど、その真ん中にドーン! と、煉瓦造りのサイロがあって。それを改造してレコーディングスタジオにしているところだったんです。ホテルからレコーディングスタジオに向かう道は、街灯もないし、夜だとほんまに暗くて。そんな見渡す限り牧草地帯みたいなところで、夜に全裸で走り回ってました。全然イギリスっぽくない話ですけど(笑)。
2023.10.12(木)
文=石橋果奈
写真=深野未季