ファンの熱い要望を実現した、いま最注目の“時の人”
テレビアニメ「呪術廻戦」の第2期「懐玉・玉折」のオープニングテーマを担当する、シンガーソングライターのキタニタツヤさん。2014年にボカロPとしての活動をスタートしたのち、シンガーソングライターとしてのキャリアを積む傍ら、Adoをはじめとした錚々たるアーティストの楽曲制作にも参加してきた。
かねてから“音楽”と“漫画”を愛するキタニさん。身を削るほどの情熱を注いで作ったという「呪術廻戦」の「懐玉・玉折」OPテーマ「青のすみか」の制作エピソードを通じて、自身の根底にあるクリエイティブ論や価値観を語ってもらった。
「漫画や音楽は、作り手の“人間の形”がダイレクトに届くから好き」
──CREA WEB初登場ということで、まずは“アーティスト・キタニタツヤ”の自己紹介をお願いします。
僕は、いわゆるシンガーソングライターってやつなんですけど、世の中が抱くシンガーソングライター像って、“ギターを持って歌う”みたいなイメージが多いのかなと。でも僕は、作詞作曲から編曲や楽器の音の雰囲気まで、パソコンで多重録音しながら基本的には1人で制作しています。音楽がリスナーに届くまでの工程をほとんど1人でやっているので、少し変わったタイプかもしれません。
──なぜ、1人で全部やる人になっていったんですか?
最初はベースやギターを持ってバンドっぽいことをしていたんですけど、ちょうどバンドを始めた時期にボーカロイドに出会って。ボカロに出会うまで、音楽ってプロじゃないと作って出せないものだと思っていたので、アマチュアがパソコンで音楽を作って、みんなに聴いてもらえるということが衝撃で、大好きな世界になりました。大学生のときにボカロの世界で音楽をアップし始めたのですが、そのまま活動を続けて、気付いたら自分で歌うようになったという感じですね。
──ボカロPとしての活動は、今のキタニさんにどんな影響をもたらしていると思いますか?
ボカロで曲を作るときは、めちゃくちゃ神経質に音の1つ1つを詰め込みたくなるし、微調整したくなるし、大雑把さがないんですよね。それは、楽曲のクオリティを底上げするという点ではすごくいいんですけど、逆にちょっと頭でっかちになっちゃう部分があって。
音楽って芸術だから、ふとしたひらめきでそのまま突っ走っちゃったほうがいいときもあると思うんです。だから頭でっかちになっちゃう部分は、自分の課題でもあるんですけど、理屈っぽいことも悪いことではないのかなと。
音楽理論に関しては、音大を出てる人に比べたら足元にも及ばないですけど、独学で勉強しました。理論が好きというか「この理屈でこうなってるんだ!」と、いい音楽の秘密がちょっとわかるとうれしいんです。
──最新シングル曲「青のすみか」は、テレビアニメ「呪術廻戦」第2期「懐玉・玉折」のオープニングテーマです。タイアップが決まったときの感想は?
2023.08.06(日)
文=石橋果奈
撮影=末永裕樹