児島 お笑いのライブってネタだけではなく、トークもコーナーも面白いことが理想です。まさにその時代の「ガンガンライブ」を観に行ったのですが、どこをとっても面白すぎて、ものすごく影響を受けました。

 ライブって、緩さだったり、自由度だったり、そういう部分が魅力だと思うのですが、芸人さんもM-1に人生をかけている。そこに照準を合わせているから、本来10分のネタライブにもかかわらず、「ネタを調整したいから、M-1仕様の4分ネタに変えてもいいですか?」と言われることも珍しくなくて。その板挟みの中で、お客さんが楽しめるライブをどう作り上げていくかは、すごく考えましたね。

――M-1が、東京のライブシーンにそうした影響まで与えていたとは驚きました。M-1に引っ張られすぎて、顕著に競技化してしまう若手も少なくなさそうです。

 

児島 つかみは何秒で、起承転結は何分ずつというように、ものすごく分析ベースでネタを作り込んでいますよね。去年はこれで良いところまで進んだから、今年はもう一つキャラクターを加えて――とか、M-1をきっかけにお笑いに夢を見た世代からすると、どうしても傾向と対策的なお笑いになってしまう。

 一方で、チャンピオン以外はみんな負けている人たちですから、敗退した芸人さんたちのケアが大変なんです。下手に「来年頑張って」とか「来年もあるよ」と声をかけると、芸人さんは「また1年、バイトしながら頑張らないといけないのか」と落ち込んでしまい、逆に辞めたくなっちゃうみたいで。

 ですから、「来年もあるよ」はスタッフ内では禁句です(笑)。心が折れたときの芸人さんへのケアも、私たちライブ主催者の役割ですから。

若手芸人が「目標」とするもの

――若い子たちは、やはりM-1やキングオブコントを目指している感じですか?

児島 だと思います。YouTubeなどに上がっている先輩のネタ動画を見て練習する子がほとんどなので、最初の基礎はできあがってはいるんですよ。私がこの仕事に携わったくらいの1年目の芸人さんって、本当に何をしていいかわからない状態だったと思います。それこそ「ダウンタウン倒してやるよ」みたいなとがった人たちばっかり(笑)。その頃に比べれば、基礎はしっかりしているなって。

2023.10.13(金)
文=我妻弘崇