この記事の連載

 暑かった夏を越え、実りの秋がやってきました。

 秋といえば真っ先に頭に浮かぶのは、やっぱり栗!

 シンプルな焼き栗から、栗おこわ、モンブランに至るまで、栗のおいしい楽しみ方はいろいろ。さらには、ジェラート、かき氷も! ひときわおいしい栗スイーツを見つけるべく、栗の生産量日本一を誇る茨城県のなかでも名産地として知られる、笠間市を訪れました。

 #2は通年大人気のかき氷店「茨城おとなのかき氷 四季と六花」へ。

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遠方からはるばる訪れるファンも多いかき氷店

 隠れ家のようにひっそりと佇む「茨城おとなのかき氷 四季と六花」は、予約制のかき氷店。2019年に日立市で開業後、20年に笠間市へと移り、22年から現在の店舗となる古民家で営業しています。

 その特徴はなんといっても、ふんだんに使われる旬の茨城県産を中心としたフルーツ!

 「当店のかき氷は茨城県産のフルーツがメイン。お客様もフルーツ好きの方が多いです」と、店主の石岡コージさんは笑います。

 秋の代表作はやはり、「笠間の栗とキャラメルマロンクリーム」。

 栗をソースやクリームにしてかけるのではなく、「笠間の栗をそのまま食べてほしい」と、手間ひまかけて渋皮煮に。てっぺんには、つややかな輝きを放つ丸ごとの渋皮煮が鎮座しています。

 もちろん栗は、笠間産。食べ進めれば、練乳や渋皮煮のシロップをかけた軽やかな口溶けの氷と、刻んだ栗の渋皮煮とそのシロップを混ぜた生クリーム、刻んだ渋皮煮が層を成し、中からも渋皮煮がごろりとひと粒。

 表面と途中にかけられたキャラメルのほろ苦さがコクをプラスし、まろやかさにアクセントを添えています。とにもかくにも、どこを食べても栗の渋皮煮がいっぱいで、何とぜいたくなこと!

 「僕自身、祖母が作ってくれた栗の渋皮煮が好きだったので、その味を伝えていけたら」と、石岡さん。同じ渋皮煮でも丸ごとだったり、刻んだり、クリームに混ぜたりすることで、異なる味の印象と変化を楽しめるようにしているそうです。

茨城のフルーツに魅せられて移住

 神奈川でサラリーマンとして働いていた石岡さんが茨城に移住し、かき氷店を開くきっかけとなったのは、サラリーマン時代に出張で訪れた水戸での会食。何を食べてもおいしく、食材の豊富さに感動したといいます。

 「野菜やお米だけでなく、メロンや栗、イチゴ、ぶどうなどのフルーツも多くつくられていることを知りました。こんなにおいしいものがたくさんあるのに、都道府県別魅力度ランキングではほぼ最下位に甘んじているなんて、もったいない。豊富な産物を使って、もっとおもしろいことができるのではないかと考えたのがスタートでした」と、石岡さん。

 そして、フルーツと合わせるべく選んだのは、素材の味を邪魔しないかき氷。パティシエや栄養士に教えを請いながら試行錯誤を重ね、「フルーツ好きがワクワクできる大人のためのかき氷」という自らのスタイルを築いていったと言います。

 使用する素材については、茨城県産を中心に生産者とのつながりを大切にし、時には沖縄県西表島の無農薬パイナップル農家にまで足を運び、話を聞きに行くという石岡さん。

「生産者の皆さんは、それぞれ思いを込めてフルーツや野菜を作っています。そんな話を聞くともっと多くの人に食べてほしくなりますし、過度な味付けは素材の良さを消してしまうような気がするんです。そして、その想いとおいしさをお客様にきちんと伝えなくては、という使命感が湧いてきます」

2023.09.27(水)
文=瀬戸理恵子
撮影=橋本 篤