“こじらせ男子”による「ポスト逃げ恥」時代の恋愛ドラマ

『逃げるは恥だが役に立つ』で描かれた「草食系男子」は、恋愛に不馴れではあっても、話し合いができる。だが「令和のこじらせ男子」は、恋愛はできても、話し合いができない。だからこそ女子は結婚相手に選ばない。『こっち向いてよ向井くん』は、そんな「ポスト逃げ恥」時代の、アラサー恋愛傑作ドラマなのである。

 共働き家庭も増え、家庭で話し合わなければならないことも増えた昨今。男女平等の家庭を望むのならば、お互いの考えていることを話し合うことができる、そんなパートナーを見つけたいという願望が、顕著になっているのかもしれない。

 筆者は現在アラサーだが、私も含めて友人たちは皆「向井くんみたいな、モテない訳じゃないけど結婚に至らない男子、いるよね。ふわふわしすぎてるんだよなあ」という話で盛り上がった。「向井くん」は、決してフィクションの中だけの存在ではない。令和のリアルなのだ。

『こっち向いてよ向井くん』は、モテるけど、結婚できない「令和のこじらせ男子」を描いた物語だった。今夜の最終回で彼はどう成長し、そしてどんな選択をするのだろう。ゆっくり見守りたい。

2023.09.20(水)
文=三宅 香帆