「今もっともアラサー女子の心を掴んでいる男性」といえば、赤楚衛二ではないだろうか。

 単独ドラマ初主演を飾った『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京系、2020年)は、『チェリまほ』の愛称で親しまれ、2022年に映画化もされるなど多大なる人気を誇った。さらには、朝の連続テレビ小説『舞いあがれ!』(NHK、2022年)では、福原遥演じる主人公の幼馴染の歌人を演じて、その存在感をお茶の間に知らしめた 。

 そしてこの夏、女性漫画誌『FEEL YOUNG』(祥伝社)で連載中の同名漫画を原作としたドラマ『こっち向いてよ向井くん』(日本テレビ系)で主演を務め、 「10年彼女がいない」33歳の男性を演じている。

◆ ◆ ◆

赤楚が演じる「向井くん」は「10年彼女がいない」

 このキャスティングに、「え?」と思われた方も多いかもしれない。そんな、令和のアラサー女子にもっとも刺さる男性が「10年彼女がいない」なんてことがあるだろうか。さすがに設定に無理がないか。イケメンなのに、33歳で、彼女もいないし結婚もしていないなんて、リアルじゃない――ドラマを見ていない方は、そう戸惑ってしまうだろう。

 しかし、『こっち向いてよ向井くん』の面白さは、ここにある。赤楚の身体をもってしても「10年彼女がいない」設定に納得させられてしまう物語。それが、令和の恋愛ドラマ『こっち向いてよ向井くん』の魅力なのである。

アラサーの恋愛ってこんなに難しいものだっけ?

『こっち向いてよ向井くん』の主人公・向井悟は、33歳の会社員。20代は仕事を頑張ってきたが、最近友人の結婚や子育ての様子を見ていると、そろそろ彼女が欲しくなってきた。そこで、知り合った女性たちにアプローチをかけてみるも、なかなかうまくいかない。「え、アラサーの恋愛ってこんなに難しいものだっけ?」「結婚に向かう恋愛って、どうやって始めるんだっけ?」友人女性に恋愛相談をしつつ、向井はある日、10年前に付き合っていた元カノのことを思い出すのだった。 

2023.09.20(水)
文=三宅 香帆