明西寺の冬の風物詩

「おじゃまします!」
あ!
「いやー、寒かった」

 つるべ師匠はストーブの真ん前に張り付いておられた。毎日のパトロールを終えると、まっ先にストーブの前にどっかりと腰を下ろす。これが、明西寺の冬の風物詩。
「つるちゃん焦げるよ、っていってもやめないんですよ」と苦笑する佐々木さん。

「どっこいしょ」

 体の芯まで温まったところで、次はごはんの時間。
 佐々木さんがキャットフードのフタを開けると……。

ガシガシッ!

 器用にも自分でフードを取り出す。

カリカリカリ
ごちそうさま~

 つるべの由来は、お察しの通り鶴瓶師匠から。

「11年前、お寺の前で車にひかれていたネコを保護し、動物病院へ連れて行って一命を取り留め、飼い主の元へと返しました。数カ月後、そのネコが子どもを産んだことを知り、これもご縁とうちで1匹もらうことにしたのです」と佐々木さん。
「名前をどうしようか」と家族会議を開いたところ、住職の娘さんがテレビに映っていた鶴瓶師匠を観て、「つるべがいい」というまさに鶴の一声でつるべと命名。オスではなくメスだと知ったのは、すっかり「つるべ」という名がしっくりとなじんできた後だったという。

「2階には、もう1匹のシロもいるんですよ」と佐々木さん。野良ネコが置いていった赤ちゃんネコを、数か月かけて餌付けして慣れさせ、今は2階のベランダで快適に暮らしているという。

シロ(オス/7カ月)

 なんとモフモフとした美少女よ……! と思ったらオスだった。

「こにゃにゃちわ」
か、かわえぇ……

 屋根を自由に上り下りできるシロは、風よけ・ハウス・トイレ完備のベランダで気ままに暮らしている。お寺の方が外をほうきで掃き掃除をする音が聞こえると、瞬時に2階から飛び降り、「シャーッ!」とほうきにしがみついて離れない、ほうき大好きネコなのだ。

 檀家さんにも人気のつるべとシロ。「お寺は堅苦しいものだと思われがちですが、まったくそんなことはありません。つるべをホームページに載せているのも、開かれたお寺を目指したいという気持ちから。1年365日、ぜひお気軽にお立ち寄りいただければと思います」と佐々木さんは言う。
 たしかに、お寺は敷居が高いものだと思い込んでいたけれど、こんなにかわいい看板ネコのいるお寺なら、毎日だって通いたい!

つるべとシロのいる「明西寺」
住所 東京都調布市若葉町1-43-5
勤務時間 あったかい時間帯

梅津有希子 (うめつ ゆきこ)
編集者・ライター。1976年北海道生まれ。ヤマハ勤務の後、FMラジオ局、編集プロダクションなどを経て、2005年に独立。女性誌や単行本、webを中心に、ペット、料理、美容など幅広いジャンルで活動中。「CREA cat」「CREA Dog」を毎号担当するほか、別冊マーガレットの『青空エール』(集英社/河原和音)の監修も務める。著書に『吾輩は看板猫である』『吾輩は看板猫である 東京下町篇』(文藝春秋)、『We are ブサかわねこ』(角川書店)、『終電ごはん』(幻冬舎)がある。
公式サイト:umetsuyukiko.com Twitter:@y_umetsu

Column

梅津有希子の商店街ネコ探訪

大人気のネコフォトブック『吾輩は看板猫である』、そしてその第2弾の『吾輩は看板猫である 東京下町篇』の著者、梅津有希子さんが、看板猫を探して、今度は商店街を巡ります。

2013.12.27(金)