食卓の主役はこのタラトール。パンと、それからショプスカサラダ(トマト・きゅうり・チーズをまぜてレモンをひと搾り)を添えて昼食だ。タラトールは、さわやかな酸味ににんにくのガツンとした風味が効いていて、するすると飲むように食べられてしまう。「暑い夏の日はタラトール。冬は肉や豆の煮込みをよく食べるけれど、夏は食も進まないからもっぱらこのスープやサラダだよ」と教えてくれた。その言葉の通り、7月のブルガリア滞在中は、どの家庭に行っても毎日のようにタラトール。ヨーグルトが、デザートや朝食だけのアイテムではなく、食事の主役となっているのだ。

 

ブルガリアのヨーグルト事情

 そんなブルガリアでは、人々はヨーグルトをいったいどれくらい食べているのだろうか? ひょっとして、日本生まれの商品から日本人が勝手に「ブルガリア=ヨーグルト」というイメージを作り上げているだけで、実は大して食べていなかったりしないだろうか。

 確かめるために、首都ソフィアにて、現地の方の買い物についてスーパーに行ってみた。

 乳製品コーナーに行くと、目に入ったのは壁一面のヨーグルト。写真のヨーグルトは一人分のカップに見えるけれど、400グラムのファミリーサイズだ。ローカル企業各社のパッケージが並び、日々の生活にヨーグルトが欠かせないものになっていることを感じる。

 一番多いのは牛乳で作られたヨーグルトだけれど、ヤギや水牛の乳で作られたものもある。「せっかくだから」といくつか選んで買ってくれたものを食べ比べると、ヤギのものは独特のにおいと酸味があり、水牛のものは脂肪分が多く濃厚な味わい。いろいろな味わいがあっておもしろい。「どのヨーグルトが一番好き?」と尋ねると、「料理に使うなら断然牛のが使いやすいけれど、そのまま食べるなら水牛かな。濃くておいしい」と教えてくれた。

 ブルガリア人のヨーグルト消費量を数字で見てみると、一人あたり年間29キロ 。日本人は約8~10キロとされているので、約3倍も食べていることがわかる。

2023.08.07(月)
文=岡根谷 実里