腸内細菌をベストなバランスで維持するために、簡単に始められるのが、ふだん使ってる調味料を“本物”に変えること。“菌オタク”の料理家・清水みのりが、とっておきの調味料と発酵レシピを紹介する『調味料を変えるだけ! 身体が喜ぶ発酵調味料メソッド』(方丈社刊)より、記事を一部抜粋してご紹介します。
“本物の調味料”で腸内環境を改善!
私たちの腸内細菌のベストバランスは、善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7といわれています。この分類は、人間にとってよい働きをするものを善玉菌、悪い働きは悪玉菌、どちらでもないのが日和見菌というように、人間が勝手に線引きをしたものです。
人間ひとりがもつ腸内細菌は1,000種類以上で、重さは1キロにもなります。まさしく人は菌まみれ。私たちの身体は自分のものであると同時に彼らの住処でもあり、多種多様な菌たちと共存する場所でもあります。
悪玉菌と聞くと、その数を0にすればいいんだと思いがちですが、菌の世界は複雑で、悪玉菌がかならずしも悪い作用ばかりをもたらすかというと、そうでもありません。ときには私たちの身体に有益な事をしてくれる場面も。また、悪玉菌がいないと、善玉菌の活動が弱まってしまいます。
あくまでバランスが保たれることが大切な菌の世界だと心得てください。バランスが崩れると、免疫力の低下やさまざまな健康被害も起こりえます。
では、菌のベストバランスを維持するためには、どうすればいいのでしょうか? ここで、発酵調味料がひと役買ってくれるんです。
醤油、味噌、酢、みりんなど伝統的な発酵調味料は、麹を使ってつくられています。麹で醸してつくられた“本物の調味料〞には、最初の原料を麹菌が分解したことによってつくられた栄養素が、当初の何十倍も含まれるようになります。
通常、私たちは食べ物を食べると、口の中の唾液に含まれる分解酵素で第一次分解が行われ、胃腸を通り、最終的には自分のもっている腸内細菌が、得意とする食べ物を分解し、身体に吸収されるわけです。
麹を使った調味料には、すでに分解酵素が含まれているので、胃腸の負担を軽減してくれ、身体の代謝に使われる酵素を減らさなくて済むというメリットがあります。
もっとも手軽で費用対効果が高い、腸内環境改善のための食べ物は、“本物の発酵調味料”なのです。
しかし“本物ではない調味料”は、「早づくり」といって化学的に発酵を短くしたり、味も人為的に食品添加物などで合成したりしています。カビが生えないよう、防腐剤を入れたり、化学調味料で味を調整したり。これでは、身体を整える効果が期待できるわけがありません。
ポイントは、「もう、なんとなくでは選ばない!」ということ。本物の調味料はどのような基準で選べばいいか、表示の見方のポイント、味わいも価格も含め、ここから具体的にご紹介します!
本物の調味料の選び方 醤油篇
●選ぶポイント
・天然醸造、または自然醸造である
・原材料は、丸大豆、小麦、塩のみ
・添加物(アミノ酸など、カラメル色素、甘味料、保存料、増粘剤、pH調整剤など)不使用
・発酵・熟成期間が1年以上
・木樽、木桶で熟成している
国産丸大豆使用の天然醸造を選ぼう!
私が醤油を選ぶ、第一の条件は、天然醸造または自然醸造であること。こちらを説明する前に、商品ラベルでよく目にする、「本醸造」について解説します。本醸造とは、簡単にいうと、醸造期間を短縮するアミノ酸液を使わない製法です。
本醸造と記載されたものがすべて、天然・自然醸造とは限りません。中でも、酵素を添加しないで醤油麹のみでつくられている、化学的に合成された食品添加物不使用、という条件を満たして製造されているものが、「天然醸造」、「自然醸造」です。JAS法の品質表示基準でこれらの記載が定められています。
大豆・小麦・塩・水が、麹菌や酵母、乳酸菌などによる分解・発酵により熟成され、人工的な温度管理もせず、ゆっくり自然のままに、時間をかける製法が重要なのです。
原料は丸大豆(出来れば国産)を選ぶこと。化学物質で油を取り除いた、脱脂加工大豆が原料になっていないかを、チェックします。油脂成分が含まれた丸大豆を使うことで、まろやかさと深い旨味が感じられます。
醤油は発酵食品ですから、長く寝かせるほど、菌(微生物)や酵素、そのほか微量栄養素が多くなります。最低1年は寝かせたものを選びましょう。木の樽や桶で熟成したものが、最高です! 長い歴史の中で育んだ、蔵つきの野生の菌たちがつくりあげる、その蔵元にしか出せない味わいがあるのも魅力です。
2023.02.01(水)
文=清水みのり
写真=落合星文