別人の写真を「私の写真として使われそうに」
ーー当初「小悪魔ageha」のモデル以外にどんな仕事をされていたんですか。
椿 大学ではフランス語専攻だったので、「星の王子さま」の翻訳のお手伝いをしたり、あと「BUBKA」で連載もしていました。
テレビにも出てはいたんですが、タレントではなく珍しい一般人という扱いでした。当時のテレビはセクシャルマイノリティへの偏見がひどくて、女の子と一緒に並んで間違い探しのハズレとして扱われたり、私は小さい頃から女の子っぽいんですが、テレビ的にはそれが面白くないと、超イカつい人の写真を私の写真として使われそうになったこともありました。
イロモノ、ゲテモノの役割を押し付けられる感じがすごくあって、毎回仕事に行くたびに泣いてました。
ほかにもテレビ番組で「芸人さんチームで出てください」と言われたり。セクシャルマイノリティ=芸人みたいな扱いだったんです。そういうことが多すぎたから、仕事を断ったら「あいつは調子に乗っている。もう使わない」とプロデューサーに言われて。週刊誌で「調子に乗ってる」「デビューし立てなのに生意気だ」とかめちゃくちゃ言われました。
私としては芸人さんみたいな特殊な才能はないし、芸人的なものを求められてもできないので、断っただけなんですけど...。当時は怒ったり、泣いたりしてましたけど、途中からは逆にそうした偏見を変えるチャンスだなと思うようにしていました。
ーー2008年には初の自叙伝「わたし、男子校出身です。」を出版しベストセラーとなります。体は男性、心は女性として生まれた苦しみを幼少期から赤裸々に綴っています。
椿 本を出版する前に「小悪魔ageha」で一度、私の自叙伝を漫画にしてくれたんです。テレビではイロモノとして扱われていたけれど、編集長は輝いている一人のモデルの自叙伝として作ってくれました。
その漫画が好評だったので、いろんな出版社さんから声がかかったんですが、その中でちゃんとセクシャルマイノリティの問題をクローズアップしてくれるということでポプラ社さんで出すことにしました。
2023.06.08(木)
文=徳重龍徳