毎日の体調管理は、体重、体脂肪、血圧を測り記録するところから始まります。食べたいものを好きなだけ摂っていては、被写体として、目指すべき到達点とズレてしまう。体を作る、心を整える。その中で、食事はもっとも大切だと気づいたのだと思います。

 

 私が出会うまで、高倉の食事らしい食事は、一日一食。美味しく食べて、張りのある肌を保ちつつ、理想的な体重を維持できるように、脂質、糖質の塩梅を考えました。出かける時、高倉は必ず「今日の晩御飯は何?」と聞いてきました。夕食はだいたい7品ほど。高倉は肉が好きだったので、牛、豚、鴨、ラム、鶏……と毎日、お肉の種類を変えて、メニューを工夫しました。

体調の変化で何か異変が起きていると察知

―─食べることが大好きな健さんが「貴、残していい?」と言ったというエピソードから『高倉健、最後の季節。 』は始まります。いつもは完食される健さんが2014年の元日、珍しく食事を残した。

小田 悪性リンパ腫と診断されたのは、3カ月後の4月でした。体調に大きな変化があったのは、2月17日。左耳、喉の痛みに、黄緑色や茶色の痰を伴う咳が止まらなくなり、ティッシュボックスがあっという間に空になるほど。体重の急激な減り方から、これは何か大きな異変が起きていると思いました。

※『フレンチ・コネクション』のジーン・ハックマンに触発された健さんの役柄への想い、亡くなる前年に提案された「養女」という方法、長期ロケに行く度に渡された婚姻届、そして最後の闘病の日々――。「週刊文春WOMAN」2023春号では、小田貴月さんのポートレート、高倉健さんの自宅でのプライベートカットとともに、インタビューの全文を掲載しています。

おだたか/1964年東京生まれ。女優を経て、海外のホテルを紹介する番組のディレクター、プロデューサー、ライターに。96年、香港で高倉健と出会う。2013年、高倉健の養女に。現在、高倉プロモーション代表取締役。著書に『高倉健、その愛。』(文春文庫)。

2023.04.16(日)
文=北村浩子