丸岡 ええ。バブル後30年続いたデフレの影響だと考えています。他の先進国では平均賃金が増加しているのに、日本はちっとも上がっていません。OECDの調査では、1位のアメリカとは400万円以上も差があります。

 角田 そんなに……。

 丸岡 日本は豊かになっていないし、給料も増えていない。だから節約しなきゃと「貧乏癖」が付いてしまった。スマホにゲームに、買いたいものはたくさん出てきますから、食べものは後回しです。

 角田 悲しくなりますね。

 丸岡 医学が飛躍的に進歩しても病院の数は一向に減る気配はありません。「医食同源」は疑いようのない事実なのに、忘れられています。本当は、どの薬が効くかよりも、ふだんから何を食べるかが大事です。

 角田 じつは私も、小説のために食養生を勉強したことがあります。「食が人間をつくる」という基本は同じなんですよね。

 丸岡 「食べものは、安さ便利さで選ぶな」。これが基調となる考え方です。利益ばかり追求した商品と食べる人のしあわせを思って作られた食材とでは、舌で感じる「おいしさ」がまったく違う。

 まるおかの商品は、野菜や米や果物は無農薬や減農薬、加工品は無添加のものが多い。ただ、初めからそこにこだわっていたわけではありません。自分の舌で「おいしい」を追求していくと、おのずと安全がついてくるのです。

 角田 おいしくて安全な食材の選び方、知りたいです。

 丸岡 はい、ご案内します。

丸岡守社長と角田光代さんの対談「安全な食材の選び方」全文は、月刊「文藝春秋」2023年4月号と、「文藝春秋 電子版」に掲載されています。

2023.04.04(火)
文=丸岡 守、角田光代