ひとり それで、ダウ90000はお笑い好きな業界人に支持されている。それはやっぱり一番の強みだと思いますよ。

――ひとりさんは小説も書くし、映画も撮る。自分の仕事やジャンルを「これだ」って決めないことの良さはありますか?

ひとり 僕には、美学がないんですよね。「芸人はお笑いしかやっちゃいけない」みたいな、そういう美学がないからね。自分が面白そうでやってみたいことがあって、それをやらせてもらえる環境だったらやったほうがいいだろうっていうことなので。いろいろやってみては、「ああ、これは合わないんだな」「これは合うな」って模索している感じですかね。

 

面白劇団系に対するアレルギー

――面白そうならやってみる。

ひとり ずっと同じことをやってると飽きちゃうしね。ちょっとずつそうやって幅を広げて、広げては狭めて、広げては狭めてって、段々と自分のいる場所を確保していくということなのかしらね。でも、こんな生意気なことを言ってるのも仕事があるうちだけですけどね。仕事がなくなったらそんなこと言っていられないから、結局「何でもやらせてください」ってなるんだけど。まあ、余裕があるうちはそういうことも言わせてもらおうかなっていう感じです。

――ひとりさんから見て、ダウ90000の蓮見翔とはどういう人だと思いますか。

ひとり すごい好青年だもん。腰も低くてね。僕、面白劇団系に対してのアレルギーじゃないけど、最初ちょっと構えちゃうところがあるんですよ。でもバラエティで一緒になった時に「バラエティとかやったことないんですけど、お願いします」って蓮見くんが。それで心つかまれちゃって(笑)。

――簡単に(笑)。

ひとり おじさんはそうよ。「なんて低姿勢な。かわいいやつだな」なんて思うからね。やっぱり初対面の時のあいさつって大事だなと思った。僕、あれできてなかったですもん。ほんとにいろんな人に言われるの。「お前、初めて会った時すげえ生意気だったんだぞ」って。つっけんどんで、愛想笑いもしないで、頭も下げてるんだか下げてないんだか分からないぐらいの角度で「お願いします」とかってやってた。あれはやっぱり嫌われてたみたい。

2023.04.03(月)
文=西澤千央
撮影=榎本麻美/文藝春秋