「こんな冠やってね。生意気ですよね(笑)」
――確かに、ダウ90000のコントは、隣の席でしゃべっている人の会話を聞いているような、ちょっとした人間の機微に焦点を当てている。
ひとり それがいいんでしょうね。お笑いっていうのはどんどん過激になっていきますから。より過激でより分かりやすく。それが食傷気味になってきた人たちには、ダウ90000のあの世界が新鮮で見やすいのかもしれませんね。
――だから今、ダウ90000が求められている。
ひとり やっぱりジャンクフードばっかり食ってると、刺身定食食いてえなって思うじゃないですか。そういう波があるんじゃないですかね。でもまだ3年目ぐらいでしょう。
――結成は2020年ですね。
ひとり 早いですよね。それでこんな冠やってね。生意気ですよね(笑)。3年でこんな立派なセット組んでもらって。
――ひとりさんの芸歴3年目はどんな感じでしたか。
ひとり まだライブのオーディションを受けるような日々かな。月に1本ライブがあるかな、ぐらいの感じ。もちろんテレビなんかまだ出てないと思う。
――ラ・ママに出てるあたり。
ひとり そうそう。ラ・ママのオーディションに行ってる。しかもまだ1本ネタでもないから、ラ・ママの登竜門コーナーのオーディションに行って落ちてるぐらいの感じですよ。登竜門コーナーさえ出れてないっていう。
ダウ90000の一番の強みは
――お客さんが手を挙げたら強制終了するという。
ひとり あんな屈辱的なシステムないですよ。人が一生懸命笑ってもらおうと思って頑張ってるのに、よく手挙げれるなと思いますね。僕はもう、あの人たちの気持ちが信じられない。アンケートに「つまんない」って書くんだったらいいですよ。目の前で一生懸命汗かいた若者がやってるのに、よく手を挙げられますよね。人の心がないんじゃないかと思うわ。
――先輩たちがそうやって道を切り開いて、ダウ90000を面白いと思える土壌が作られたのだと思います。
2023.04.03(月)
文=西澤千央
撮影=榎本麻美/文藝春秋