音源もグッズも自分で作るから、純度100%で伝わる

――illiomoteは渋谷さんが雑誌「ポパイ」で紹介しているのを見て知りました(2019年11月号「渋谷直角の日本全国ナウなミュージシャンを探せ!」)。

 あれがメディア初出しだったみたいで、そのあと「ブルータス」で本人に取材させてもらえて僕もびっくりしました。ファン0人のときに紹介してたらしくて。最初見たとき、ライブにたくさん人がいて、音楽はギターとサンプラーで、UKもUSもオルタナもレゲエもごちゃ混ぜっぽい感じで、最前でギャルっぽい子たちが踊ってて、すごい、こんなバンドがいるんだと感動してたんですが、聞いたらそのときは同級生とか友達? だったみたいです(笑)。そこからライブやるたびにファンが増えていってパワーアップしてますね。メンバーのマイヤがギタリストとしてどんどんかっこよくなっていって、去年からサポートドラマーも入れたライブもやるようになって、どんどんバンドとしてすごくいい感じになってきてる。今年もめっちゃ楽しみです。

illiomoteのレコード「In your 徒然」を持つ渋谷さん。
illiomoteのレコード「In your 徒然」を持つ渋谷さん。

 Wang Dang Doodleはブルースのバンド。アレサ・フランクリンばりのパワフルなボーカルとブルースハープ、もう1人がギターとサンプラーのスタイル。ブルースの良さを伝えたいという思いが強いらしくて、でもトラックは打ち込み主体で、ミニマルみたいなこと(同じメロディーやリズムを反復する)もやってたりして、もはや一見ブルースじゃないところがいいんです。ブルース好きおじさんが喜ぶようなブルースじゃないと思うけど、この人たちにしかできないミックス具合が面白い。正式メンバーなのかわからないんですけど、ドラムの女性(Desire/デザレさん)もオシャレでかっこいい。やっぱりドラムがいるとよりライブ感があって気持ちいいですね。

Wang Dang Doodleのカセットテープとフライヤー。
Wang Dang Doodleのカセットテープとフライヤー。

 シンガーソングライターのさとうもかさんも、縁があってここ5年くらいずっと応援してて、今年ますます楽しみで。メジャーを経て去年またインディーに戻ったんですが、これからもっとよさが出ると思う。ライブでずっと歌っていた「舟」が名曲で、配信で聴けるバンドバージョンのも良いんだけど、やっぱりアコギ一本の弾き語りバージョンの情感が最高すぎで……って、めんどくさいオールドファンの感想(笑)。メジャーカンパニーだと露出は大きくなってメリットも大きいんでしょうけど、自分で自由に音楽をやりたい人にとっては不自由な面もあったのかもしれないですね。さとうさんは世間一般の人を感動させられるソングライティングの才能がある人なので、メジャーでもインディーでも、マスに向けて歌っていってほしいですね。

 インディーだとCDも物販のグッズもなんでも自分たちで作るんですよね。さとうさんも、自分でイラストも描いたグッズを以前はよく作っていて、そういうの味わいがあって好きなんです。彼女が高校生の時に手作りした、「さとうみず」というチャットモンチーのカバーとかが入ってる激レアCDももらって。さとうさんがユーミンのようになったらすごいプレミアがつくと期待しています(笑)。

さとうもかさん本人のイラストのグッズ。
さとうもかさん本人のイラストのグッズ。

 音源の配信もCDやグッズの物販も今は個人でもできるし、仕事をやりながらバンドをやっている人もいるし、僕が見に行くようなバンドの人たちは、なにがなんでもメジャーにみたいな感覚もない感じがします。めちゃくちゃ作品ペースが遅かったりもして、売れたい、金が欲しいみたいな野心が強そうな人があまりいない。優しい人が多いです。音楽をやっている目的とか理由が、単純に自分たちが表現したいものがあるからなんだろうなと。自分たちで音源作って、シール作って、手刷りのTシャツ作って、ZINE作って……物販でそういうのを見ると、たまんない気持ちになるんです。すごくいいなーって。キラキラしてますよね。

――グッズやZINEの手作り、まさに渋谷さんが1990年代にやっていたことですね。

 そうですね、ぜんぶ手持ちで、ぜんぶ自分で考えてやる感じ。若いパワーだから成立しますよね。こっちはもう外注ばっかりで(笑)。僕は若い人がやってるカフェとかギャラリー、古着屋でおもちゃも置いてるような店も行くんですが、年齢的にマーケットに入っていないんだけど、でもなんかこの店のセンス好きだなってことがあるじゃないですか。インディーのバンドを観るのはそれに近い感じがあります。若い人たちの純粋な創作意欲に触れて、刺激を受けてる。できるだけ紳士的に「おじさんこれ買うよ」と、あまり話しかけたりせず、お金だけ落とすようにしています。

――世代差に気を遣いつつ応援する姿勢が、渋谷さんの作品『デザイナー渋井直人の休日』みたいですね。

 ライブハウスに来てる人たちもみんな若いですしね。奥さんとふたりで行って、後ろのほうで静かに感動しながら見ています。ワンダン(ドゥードゥル)とか、ライブ中すごいニコニコしながら演奏してて楽しそうなんですけど、僕とかが最前列で踊ってても嬉しくないだろうと思っちゃって(笑)。

2023.03.15(水)
文=ライフスタイル出版部
撮影=佐藤 亘