道端 特に白の背景でポラを撮ると、体が膨張して見えやすいんです。でも、ポラの時点で「太ったな」と思われると、次の仕事には絶対に呼ばれない。
だから、「モデルがハンガーのように痩せていれば、服を綺麗に見せられる」という空気はあったと思います。
妊娠で「あぁ、これで自由に食べられる!」
――それが変わったきっかけは?
道端 24歳で妊娠したときです。「モデルだから痩せていなければ、でも食事制限はリバウンドがきて辛い、いつまでこんな生活を続けるのか……」と思っていた頃でした。だから正直なところ、妊娠はすごくうれしかったです。
――子どもができた喜びだけじゃなく、「これで自由に食べられる」という?
道端 そうなんです。仕事を10カ月ほど休んだので、「自由に食べられるのは、本当に幸せだな」としみじみ思いました。
モデルの世界は「表現力だけで勝負。シンプルな世界」
――モデルの仕事はルッキズムに囚われる性質があると思います。カレンさんは、自分がモデルという「商品」として見られることを、どう感じていましたか。
道端 私はむしろ、それが好きでした。オーディションは私の個性やバックグラウンドはまったく考慮されず、表現力だけで勝負する、すごくシンプルな世界です。
――ある意味、公平というか。
道端 そうですね。演技するのに近い感覚かもしれません。モデルとして、いかにそのブランドの服を表現する女性になりきるかに、やりがいと誇りを感じていました。
だから、モデルは服を表現するひとつの「素材」のようなものです。周囲のスタッフとの共同作業の中で、自分の役割をどこまで全うできるか……ですね。それができないモデルはやっぱり、売れないです。
モデルの矜持「私が着れば、1000円のシャツが1万円に見える」
――プロである以上、期待に応えるのは当たり前?
道端 期待以上の結果を出したいんです。そうすると、次につながるので。
私は現場に呼ばれたときに、周りのスタッフに「カレンを呼ぶんじゃなかった」と思われるのは、絶対に嫌でした。
2023.03.11(土)
文=前島環夏