妙なミュージカルで“妙ージカル”。その言葉通り、音楽と歌と踊りに満ちた演劇でありながらどこかミュージカルとは違う。そんなエネルギーに満ち溢れた唯一無二の演劇を展開する劇団「FUKAIPRODUCE羽衣」。
第27回公演となる新作公演「プラトニック・ボディ・スクラム」が2023年2月9日(木)~2月12日(日)、本多劇場にて上演される。FUKAIPRODUCE羽衣で作・演出・音楽・美術を手掛ける糸井幸之介に話を聞いた。
特別な時間、凄くエンターテイメント的な作品になった手ごたえがある
――羽衣というと、歌も踊りも、すべての表現が非常に熱量が高く、それでいて鑑賞後は人生の素晴らしさに包まれるような心地よい開放感に満たされます。ミュージカルのような高揚感とプリミティブなエネルギー、まさに“妙ージカル”という言葉がぴったりですよね。劇団を始めた当初からこのコンセプトはあったんですか?
羽衣の前身に劇団「劇団」というのがあったのですが、その頃から音楽の多い芝居をやっていて。かなり早い段階から妙ージカルというのは言っていましたね。
とはいえ当初は、若かったというのもありますが、歌や踊りの上手さ、テクニックで魅せるというよりは、熱量で、エネルギーで表現する、というのは大きかったですね。ハードコアというか。肉体と声を出し切っていくというのをかなり意識していて、役者の人たちにも無理やり声を出させたりして。今思うと悪いことしたなと思います(笑)。
それから齢を重ねたり、大人になっていく中で、いろいろなことをやっていったり、新しい表現に挑戦してみたりとありましたが、根本の“妙ージカル”というスタイルは変わらないですね。
今回は舞台を作る原初的な楽しさにどっぷり浸かってみようと
――今回は舞台美術である巨大な絵(9m×9m)もご自身で描かれています。
今作は初心に帰るということを意識してみたんです。
来年で羽衣ができて20年。齢をとったり、コロナがあったり、いろいろありました。公演の規模もありがたいことに大きくなってきたのですが、そうすると物量的にもマンパワー的にも全部自分で、というわけにもいかなかったり。劇団立ち上げ当初のような原初的な舞台を作る楽しさというのがどうしても少なくなってしまう部分もあって。
思い切って、今回は原点に帰ろうと。本多劇場という大きな劇場で自分がやれることをやってみたらどうなるんだろう、と年齢的な要素も含め不安もありましたが、舞台美術も描いちゃおう! と。舞台を作る楽しさに、欲深くどっぷり浸かってしまおうと思ったんです。
――実際、こうして描き上げてみていかがでしたか?
楽しかったですね。
絵を描くのもそうだし、今自分がやりたいことのすべてを舞台にぶつけたというかうっぷんを晴らしたというか(笑)。今回はかなりギアが入っていたと思います。かなり良いんじゃないかという手ごたえは正直ありますね。
2023.02.09(木)
文=CREA編集部
撮影=平松市聖