小川 「SFの人が一般文芸を書いている」みたいなものがもてはやされるフェーズはそろそろ終わりだと思っています。今後は、一般文芸を書いている人がどんどんSFを書いていくのをトレンドにしたいですね。

SFと歴史小説の共通点

――「作家の読書道」でインタビューした時、SF小説と歴史小説は似ていると思ったという話が面白かったです。

小川 SFも歴史小説も、現代とまったく違う価値観、ルール、文化、人々を書いていますよね。宇宙人について書くようなものだ、という点で一緒だと思います。実際、SF作家も歴史小説を書いている。冲方丁さん、宮内悠介さん、上田早夕里さんとか。でも、逆はあんまりいない気がするんです。僕が知らないだけだったら申し訳ないんですけれど。歴史小説家がSFを書いてくれると、すごく盛り上がるのに。

 それで、川越宗一さんに会った時に、「SF書いてください」って言っておきました(笑)。「『吉里吉里人』みたいなのを書いてください」って。川越さんならいけんじゃないかな、と思ってるんですけれど。他にも書けそうな人はいますよね。

――いますね。小川さんは、SFは論理と理性に対する信頼感があるところが心地よい、とおっしゃっていましたよね。ご自身も理性的でありたいですか。

小川 自分もあまり感情的にならず、理性的に生きていきたいし、理性的な社会になってほしいけれど、とはいえみんな感情で動いちゃうものですよね。人間ってそんな完璧に理性的に生きることはできなくて、僕はそこに文学というか、小説の隙間があると思うんです。それこそ、賢い人たちが理性によって国家を作ろうとしたらそれが失敗する。ある意味、ポル・ポト政権やソビエトもそうだったりするわけで。

 

「人から命令されない仕事がしたかった」

――数学が好きで大学では理系に進んだけれど、文転されていますよね。そこでも、明確な解答があるものでなく、むしろ解答がわからないもの、小説の隙間的なものに惹かれたわけでしょうか。

2023.02.09(木)
文=瀧井 朝世