この記事の連載

 おっとりとした人柄が人気の料理研究家・枝元なほみさん。ホームレスの人たちと仕事を作る『ビッグイシュー』の活動に参加し、農業支援や「夜のパン屋さん」などにも取り組んでいます。『捨てない未来 キッチンから、ゆるく、おいしく、フードロスを打ち返す』(朝日新聞出版)に込めたフードロス×飢餓ゼロへの思いを伺います。(インタビュー【前篇】を読む)


生産効率を重視した結果、見落としてきたこと

――枝元さんはビッグイシューの活動に参加されていて、最近ではパン屋で売れ残ったパンをホームレスの人たちと販売する「夜のパン屋さん」という取り組みもされています。人とのつながりを大切にしたこの取り組みは、枝元さんの話す「資本主義社会の次にあるステージ」と共通していそうですね。

枝元 私がビッグイシューに関わっているのは、ホームレスの人たちを支援するんじゃなくて、フラットな関係でいられるところが単純にいいと思ったから。ビッグイシューは、お金を渡すんじゃなくて仕事を渡すという考え方だからね。

 「夜のパン屋さん」は、パン屋で売れ残ったパンをホームレスの人たちと仕入れて、販売する取り組み。その売り上げはホームレスの人たちの収入につながります。

 世の中には、「お金にならないことはつまらない」という風潮があって、生産効率を中心に世界が回っています。でもそうすると、一番ベーシックな「人が食べて生きていく」ということがおろそかになってしまうんじゃないか、と思うんです。

 テレビで食べ物を「おいしそう」と眺めるだけでは、お腹がいっぱいにはならない。だから、便利なプラットフォームを作ることばかりに気を配るのではなくて、リアルで具体的なやりとりを一番のベースにやっていきたいと思っているの。

 「夜のパン屋さん」は、パンを購入する人たちにとっても、買う行為が支援の一つにつながるでしょ。それに、食べ物を買うことに対して、コスパばかりを重視するのではなく、人とどうつながるかを考えるきっかけになると思うの。

2022.12.28(水)
文=ゆきどっぐ
撮影=平松市聖